2017 Fiscal Year Research-status Report
地域ブランド認知における「ひいき」と地域関与の関係性
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15K17142
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
林 靖人 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (60534815)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地域ブランド / ステレオタイプ / ひいき / 潜在的認知 / 地域関与 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、居住や特産品の購買など「地域への関与」の高まりが、地域への愛着やコミットメントの現れとして「ひいき(ステレオタイプ)」を生み出す可能性について検討するものである。ひいきの発生は、自らの関与が高い地域ブランドへの評価を高める一方で、他の地域ブランドに対する評価を低下させる。ただし、これらは本人の顕在意識よりも潜在的(非意図的)意識に基づいて行われる可能性が高い。そのためアンケート等による測定に加えて、心理学研究等で用いられる「潜在連合テスト(Implicit Association Test:IAT)」による実験を行なってきた。 平成29年度は生鮮食品から対象を加工食品(ワイン)に拡大し、ランキングや認証による印象変化への影響等を検討しながら、環境配慮や倫理的な配慮商品への志向性(エシカル・コンシューム)と企業や地域ブランドに対するひいきの効果を検証した。本調査目的を検証するために、本年度はウェブアンケートを用いて首都圏と長野県を対象とする1000名のデータを収集した。 同データの分析から、ワインに関する知識が多いほど特定の産地にこだわるよりも多様な産地を楽しむ傾向が見られる一方で、知識の薄い人は日本産ワインに選択が集中する傾向が示された。仮説ではこだわり(知識)が特定の産地に対するひいきを生み出すことを予測したが、知識量がすくないほどひいき(ステレオタイプ)を発生させる可能性が高まることが示された。また、本調査研究では全体としてエシカル志向がワイン評価においてひいきを生じさせることは確認できなかったが、安全性という切り口が関わるとエシカル志向を高める可能性が示唆された。 平成30年度はまとめに加えてこれら調査結果を踏まえた追加調査を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、マーケティング要素を含むものであるため、実験室のような統制された環境よりも様々な外部要因が存在する現実環境での調査研究が求められる。その意味で、実験や調査研究において購買経験や社会経験の少ない学生は対象者として不適切なことが多い。しかし、社会人等であっても誰でも良いのではなく、生鮮食品を日常的に購入する人や地域・環境などに対する志向性を持ったセグメントを実験や調査対象として切り取る必要がある。このような条件の対象者を確保する際には、1度募集を行った上でスクリーニングをかけ、数に達するまで募集とスクリーニングを行う作業が発生する。平成29年度は調査会社の協力を得て実施することができたが、予定した予算が不要になったり、予想以上の時間を要するなどの調査研究活動における遅延等が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は長野県内自治体等の協力を得て、モニター等の確保をおこなったが、更に協力団体を増やして、最終年度のまとめに繋げるためのデータを確保する。
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Causes of Carryover |
自治体の事業等と協力して実施したことで、被験者確保等も無償で実施することなどが可能になった。このため当初予定した謝金等の支出が不要となった。他方で追加資料や必要備品等を購入することとなった。次年度使用額はH30年度請求額と合わせて学会発表や調査のための旅費に使用する。
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