2016 Fiscal Year Research-status Report
ディアスポラ・マーケティング-文化変容からの検討-
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15K17148
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺崎 新一郎 九州大学, 経済学研究院, 助教 (70732452)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化変容 / コスモポリタニズム / 先行要因 / グローバリゼーション / グラウンデッド・セオリー・アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に実施した文化変容の鍵概念の一つである、消費者コスモポリタニズムの形成メカニズムに関する分析成果を、英語論文として発表することを主たる目的とし、研究に取り組んだ。複数回にわたる査読を通して、原稿の修正を重ねた結果、無事ターゲットとなるジャーナルに受理されることが決定した。 論文が受理される以前は、コスモポリタニズムの先行要因の解明に主眼を置いた内容としていたが、オリジナリティを高めるため、先行要因および調整要因間の関係性を明らかにし、図式化するという、より難度の高い課題を設定して、分析を重ねた。当該概念の先行要因は既存研究において、演繹的に設定された関連概念を独立変数とする回帰分析で検討を試みたものがいくつかみられたため、先行要因に関するレビューを大幅に厚くすることで、既存の発見事実と本研究との差異や棲み分けを明確にした。 形成メカニズムの図式化にあたっては、要因間の因果関係や調整関係を精緻に検討するため、インタビュー・データとの対話を丹念に行い、整理していった。この過程において、先行要因というよりもむしろ、結果要素と捉えられる概念が浮かび当たったため、今後の研究の土台となるようワーキングペーパーとして別途まとめあげた。一連の形成メカニズムに関する研究を通して、コスモポリタニズムは線形に構築されるのではなく、結果要素を介してさらに強化されていくという、循環型のモデルになっていることが示唆された。 さらに、文化変容と関連性のある五つの概念について、社会的同一性理論の観点から類型化し、なかでも重要な三つの概念に着目し、それらを援用した実証的研究を中心にサーベイ論文を書き上げた。当該レビュー論文も既に国内論文誌に受理されており、来年度ほどなくして出版される予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究成果が投稿から論文として受理されるまで、9ヶ月以上かかったが、修正稿の提出期限が非常に短かったことが功を奏して、テンポよく論文をより良いものに仕上げていくことができた。また、コスモポリタニズムの先行要因についてのレビューは、前年度に詳細に整理できていたため、速やかに本稿のオリジナリティを規定できたことも進捗に寄与した。さらに、投稿論文への査読コメントを通して、レビューアーの先生方より有益なコメントを複数いただいたため、それに丹念に応えていくことで、受理に耐えうるクオリティの論文を迅速に書き上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までは文化変容の形成メカニズムに着目して、研究に取り組んできた。その結果、前述の通り、コスモポリタニズムは線形に構築されるものではなく、結果要素を介してさらに強化されていくという、循環型のモデルとなっていることが示唆された。そこで、文化変容が進んだ消費者に対するアプローチの方略を探るべく、変容の度合いが低い消費者との比較を通して、いくつかの実験を試みる予定である。 調査対象は他国の消費者も含まれるため、データ収集の一部を海外企業に委託する必要がある。したがって費用が高額になると推測され、出張費用などを極力抑えて、より良いデータを収集することを最優先に、スケジューリングしていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度に多国間分析を通した大規模なインターネット調査を行うため、費用が高額になることが見込まれる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外の調査会社を通して、複数国の消費者を対象にインターネット調査を行う。
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