2015 Fiscal Year Research-status Report
サービス業界におけるソーシャル顧客関係管理の理論と実践に関する研究
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15K17151
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
佐野 楓 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (60707298)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソーシャル顧客関係管理 / ソーシャルメディア / 観光業界 / サービス / 顧客満足 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては、研究目的の第一を達成するために、主にソーシャルメディアを通じて、顧客が実際に求めること、及び企業が想定している顧客の求めたいことを明らかにするとともに、顧客と企業の間におけるギャップをいかに埋めるか探索した。 従来の顧客関係管理及びソーシャルメディアに関する先行研究を整理した上で、ソーシャル顧客関係管理の理論の土台を築き上げ、ソーシャルメディアを通じて、顧客が企業に対して何を求め、何を重視するか、特に、顧客がどのような場合にソーシャルプラットフォームというユニークな環境を利用するかについて明確にした。また、企業が想定している顧客のソーシャルメディアを利用する理由を整理した上で、企業と顧客のギャップを明らかにした。上記の段階で、で明らかにしたギャップに焦点を当て、このギャップを埋めるためのソーシャル顧客関係管理のプログラムを検討した。従来の顧客関係管理のプログラムにはない優位性を明確にすることによって、顧客と企業のより良いリレーションシップの構築を図った。 上記の研究成果に関して、2015年5月のAcademy of Marketing Scienceで"Effect of social media on customer satisfaction and relationship strength in a high perceived risk service in Japan"と12月の3rd World Research Summit for Tourismで"Do they really work? Exploring the direct and indirect effects of social media marketing activities on different service sectors in Japan"で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、当初研究目的を90%に達成したと考えられる。 まず、当初「顧客と企業の間におけるギャップをいかに埋めるか探索する」という重要な研究目的を設定した。その研究目的を達成するため、研究実施計画に提示した3つのステップに沿って、研究を行った。ステップ①は、「ソーシャル顧客関係管理の理論の土台を築き上げる」という段階であり、ステップ②は、「ソーシャルメディアを通じて、顧客が企業に対して何を求め、何を重視するかを明確にする」という段階であった。それに関して"Effect of social media on customer satisfaction and relationship strength in a high perceived risk service in Japan"及び"Do they really work? Exploring the direct and indirect effects of social media marketing activities on different service sectors in Japan"という2本の研究論文においては、「ソーシャルメディア・マーケティング効果」の測定指標を明確にした上、企業側が行ったソーシャルメディア・マーケティング活動は顧客の企業の各サービスに対する満足度などにいかなる影響を与えるかを明らかにした。以上の研究成果について、国際学会で報告し、欧米の研究者に高く評価してもらった。 また、27年度の研究ステップ③は、「ソーシャルメディアの商業化に関する企業側と顧客側のギャップを明確にし、効果的な顧客関係管理プログラムを構築する」という段階であった。調査会社の協力を得て、上記の研究計画を予定通り実施した。その研究成果を28年度の前期に発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度においては、ソーシャルメディアの影響により形成された顧客の心理的プロセスに基づき好意を形成させて利益を上げるというソーシャル顧客関係管理の戦略を探索するとともに、ソーシャル顧客関係管理のプログラムと従来の顧客関係管理のプログラムとを比較して、ソーシャル顧客関係管理のプログラムの効果を測定する尺度の開発と評価基準の探索を試みる。 ステップ①前年度の研究結果に基づき、ソーシャルメディアの影響の下で形成された顧客の心理的プロセスの因果モデルを構築する。具体的には異なるサービス業界でも同じ因果関係が存在するかどうかについて、業界別に顧客心理プロセスの因果モデルを構築する。 また、このステップでテキサス大学IC2;研究所のLinda Golden教授との共同研究を開始、ソーシャル顧客関係管理のプログラムの効果を測定する尺度の開発と評価基準の探索を行うこととし、夏休み期間中には申請者自身が訪米する予定である。この共同研究はステップ②③においても引き続き実施する。 ステップ②前ステップで明らかにされたソーシャルメディアの影響の下で形成された「顧客心理プロセス」と「顧客同士のつながりの強さ」に基づき、各サービス業界の企業に必要な、顧客を獲得し、維持するソーシャル顧客関係管理の戦略を探索していく。 ステップ③ソーシャル顧客関係管理のプログラムの有効性を測定する尺度を開発する。具体的には、従来の顧客関係管理のプログラムの有効性を測定する尺度に基づき、ソーシャルメディアによる影響と特徴を考えた上、ソーシャル顧客関係管理のプログラムの有効性を評価する基準を検討し、特に従来の顧客関係管理のプログラムにない尺度について探索していく予定である。更に、この二年間に亘って研究した成果をサービス企業に提案して実地に導入してもらい、実際的なサービス業界への応用を図るようにしたい。
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Causes of Carryover |
前年度のステップ③、すなわち、「ソーシャルメディア・マーケティング活動に対し、企業側と顧客側におけるギャップを埋めるためのソーシャル顧客関係管理のプログラムを検討する」という段階から、得た研究成果は、まだ発表されていないからである。それに関して、平成28年度中に、国際ジャーナルに投稿し、国際学会で報告する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に得た研究成果、並びに今年度の研究成果を28年度6月にJournal of Travel & Tourism Marketing、8月に『日本情報経営学会誌』 に投稿し、22nd Asia Pacific Tourism Association Annual Conference、Global Marketing Conference、及びInternational Marketing Trends Conferenceで研究報告を行う予定である。 また、「顧客心理プロセス」と「顧客同士のつながりの強さ」に関する統計的モデルを構築するため、調査会社の協力を得て、日本全国18歳以上の男女(3000人程度)に対するオンライン調査を実施する予定である。
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Research Products
(6 results)