2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Effect of Dividend Policy on Earnings Management: An Empirical Analysis of Japanese Firms
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15K17154
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
市原 啓善 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (60732443)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 財務会計 / 報告利益管理 / 利益平準化 / 配当政策 / 実証分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、配当政策に関連した会計行動を取り上げて分析した。分析結果の詳細については拙稿(「会社法配当規制と利益平準化行動の抑制」『年報 経営ディスクロージャー研究』第16号、2017年)を参照されたいが、その主要な結果は次のようにまとめられる。 企業経営者による利益平準化行動(earnings smoothing)の動機の1つとして、株主からの信頼の獲得を目的とした安定配当の実現が指摘されている。これまでの実証研究では、減配を回避したい企業経営者は、わが国会社法配当規制で規定される配当財源を確保するべく、利益増加型の利益管理行動を行っていることが指摘されている。そこで本稿では、國村 (2014)で提起された検証仮説「行き過ぎた利益調整は、広義の制度(enforcement)、つまり法律(law)や自己規律(self-disciplining)により抑制される」に基づく分析モデルを拡張して、会社法配当規制がもつ利益平準化行動の抑制効果について分析を行った。分析の結果、前期配当の維持に必要な配当財源が不足した企業では、安定配当を目的とした利益平準化行動を積極的に行っていることを示す結果が析出された。ただし配当財源が不足した企業のうちでも、配当規制の遵守を決定した企業においては、利益平準化行動が有意に減少する結果が析出された。 米国では各州において異なる配当規制が規定されているのに対して、わが国会社法配当規制では、個々の企業の個別事情や各利害関係者間との個別の契約関係を考慮せず、一律すべての企業にその遵守が要求されるという点に特徴がある。会計基準の国際的収斂化が起きる中、わが国固有の会計制度が企業経営者の会計行動に与える影響を明らかにする研究は、ディスクロージャー制度のあり方に何らかの示唆を与えるものとなり得ることが期待されている。本研究の今後の展開としたい。
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