2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17156
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中村 亮介 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (40549713)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 財務制限条項 / コベナンツ / 債務契約 / 投資行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金融機関と借り手企業の間で結ばれる債務契約で設定される「財務制限条項(financial covenants)」の役割について,実証的に検証することを目的としている。そこでは,借り手企業が財務制限条項に違背した場合,金融機関は「期限の利益を失わせる(つまり,全額返済をせまる)」権利を持つが,日本ではこうした抵触時のペナルティを看過する場合が多い。では,なぜ抵触しても「トリガー」として必ずしも機能しない財務制限条項を設定するのか。 平成27年度ではまず、先行研究を整理し、かつ問題意識を広く共有するため、わが国における財務制限条項の現状と課題について論文を公表した(中村亮介・河内山拓磨(2015)「日米比較からみる財務制限条項の現状と課題」『企業会計』第67巻第6号,pp.61-67。)そこでは、米国と日本とでは財務制限条項の使われ方が大きく異なっていることを示した。具体的には、財務制限条項の種類について、米国では多様な財務制限条項が利用されるが、日本では純資産維持条項と利益維持条項の組み合わせが1つの「型」として存在すること、そして 抵触時の態様として即座に返済を求めない点で日米は共通しているが、米国では再交渉という形で対処するのに対して、日本では契約を見直すというよりもシンプルに返済が猶予される傾向にあることである。 また、借り手企業の投資行動に注目し、それが財務制限条項の抵触によって影響を受けるかどうかを検証した(河内山拓磨・中村亮介(2015)「財務制限条項への抵触が企業の投資行動に及ぼす影響」日本会計研究学会第74回全国大会自由論題報告,神戸大学。)そこでは、条項の抵触によって、特に固定資産売却収入を控除した純投資額に鋭い落ち込みが観察された。 この他、関連研究として著書(分担著)1冊、論文1本、学会報告2回の成果を挙げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画書では、平成27年度に学会報告を1回行い,論文1本を発表することを目標としたが、結果、著書(分担著)1件、論文2本、学会報告3回の成果を挙げた。以上より、進捗状況としては、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究の整理および財務制限条項データベースの構築は概ね済んだので、以降は実務家へのヒアリングおよびデータ分析を行うことにより、論文執筆に注力する。あわせて、期限である来年度末までに、財務制限校に関する著書を完成させる目途をつけたいと考えている。
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Causes of Carryover |
27年度に購入するはずであった海外の債務契約に関するデータベースについて、その利用が28年度以降になることとなったために、その分の使用予定額を繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度に購入するはずであった海外の債務契約に関するデータベースを購入する。
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Research Products
(6 results)