2019 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical research on purchase price allocation and goodwill
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15K17165
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
高橋 由香里 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (10706758)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | のれん / 企業結合会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、企業結合により生じる正ののれんの会計上の性質を実証的に解明することにある。とりわけ、企業結合における識別可能資産および負債の時価評価の問題に着目し、多くの先行研究や会計基準で「超過収益力」と表現されてきた正ののれんの会計上の性質を実証的に解明することをねらいとする。 2019年度は、引き続き、先行研究の整理、データの収集および仮分析を行った。のれんを非償却とする米国の先行研究の結果をふまえると、経営者報酬など何らかのインセンティブがある場合に、のれんを規則償却する日本企業ではのれんが過少計上される可能性がある。 このような観点から、当初設定していた検証課題(a)識別可能資産および負債の時価評価差額とのれんの大きさの関係、および(b)識別可能無形資産等への取得原価の配分を検証するために、データ収集を行った。日本基準において2010年4月1日以後開始する事業年度より企業結合会計が大きく変わったため、2010年4月以降に公表された上場企業同士の企業結合について、有価証券報告書の企業結合関連の注記から目視で取得原価の配分にかかる情報を抽出した。 2019年度末時点では実証分析のためのデータ整理を行っている途上段階であり、検証課題にかかる明確な結果は出ていないが、識別可能資産を計上した企業はそれほど多くなく、のれんが「超過収益力」と適切に表しているとはいえない可能性がある。 現在、国際的にのれんの規則償却再導入をめぐる議論が引き続き行われており、仮に正ののれんの規則償却が国際標準の会計処理となった場合、国際的調和化のために一時利益計上とされた負ののれんの会計処理の取り扱いが問題となる可能性がある。本研究における検証課題は、こうした問題を検討するうえで重要であると考えられるため、研究期間内に研究成果の公表には至らなかったが、早急に研究成果として公表できるよう努めたい。
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