2015 Fiscal Year Research-status Report
日本的マネジメント・コントロールの理論的・実証的研究:会計コントロールからの接近
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15K17169
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
西居 豪 専修大学, 商学部, 教授 (30439517)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マネジメント・コントロール / 理論的構成概念 / 傾性概念 / 管理会計システム / 戦略的業績評価システム / テンション / 会計知識 / パーソナリティ特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本企業の管理会計実践を分析するためのマネジメント・コントロール概念を明確化することを目的としている。この目的を達成すべく、平成27年度には以下に示す研究に取り組んだ。平成27年度前半には、①過去の質問票郵送調査によって収集されたデータの分析を本研究の課題に関連づけて行った。マネジメント・コントロールの中心的技法の1つである戦略的業績評価システムを取り上げ、重要視する組織目標、戦略的業績評価システム、パフォーマンスの三者の関係性について実証的に検証した。平成27年度後半には、②質問票郵送調査に基づく定量的分析による管理会計研究を念頭に置いた構成概念の取り扱いに関する文献レビューを行った。この研究は、マネジメント・コントロール概念を適切に測定するために、欠かせない議論を提供しており、今後のモデル構築の参照点となる。さらに、③会計コントロールの遂行に深く関連する会計知識の取得への影響要因についての調査研究を行った。 ①の研究成果に関しては、2015年10月に8th Conference on Performance Measurement and Management Controlにて報告を行った。その後の査読審査を経て、当該研究論文(The effectiveness of strategic performance measurement system in creating and steering tension)は『Studies in Managerial and Financial Accounting』2016年31号に掲載される予定である。②の研究成果については、『産業経理』2016年4月号にて「管理会計研究における構成概念についての一考察」として公表された。③の研究成果については、現在海外ジャーナルに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去に収集したデータを用いた分析による研究成果は順調に公表することができた。その一方で、日本的管理会計システムの設計・運用属性を抽出するための文献調査を平成27年度中に終えることができなかった。これは、文献調査の過程で、単なるシステムの特性のみに着目するのではなく、それら特性による組織成員への影響を捉えるためのフレームワークについても十分な検討が必要であると考えるに至り、調査・分析の対象を拡張しているためである。結果的に、この拡張は研究全体の質を向上させるものと考えている。こうしたことから、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度の研究より得られた知見をさらに拡張すべく、以下の研究内容の推進を考えている。なお、(4)については、当初の研究計画では想定していなかったものだが、平成27年度の文献調査を通じて、その重要性を認識し、新たな研究計画として追加している。 (1)平成27年度から継続している文献調査から、管理会計システムの属性とその影響下にある組織成員の内的状態を捕捉するための概念モデルを提示し、その実証的妥当性を WEB サーベイを通じて検証したい。 (2)会計的なコントロールを構成する重要な要素である原価管理に着目し、アーカイバル・データによって測定されるパフォーマンスとの関係性について分析を行う。特に、利益の量ではなく質に着目した分析を行う予定である。 (3)戦略的業績評価システムとアーカイバル・データによって測定されるパフォーマンスとの関係について分析を行い、平成27年度に得られた知見をさらに拡張したい。 (4)マネジメント・コントロールによる組織成員への影響から組織的な行動パターン形成に至るメカニズムを解明するために、Agent-based modelingという研究手法を適用し、特定のマネジメント・コントロールの動的プロセスについての理解を深めたい。 総合すれば、マネジメント・コントロール、組織成員、パフォーマンスの関係性について、複合的な観点から検討を進めていく予定である。
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