2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17177
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Research Institution | The University of Aizu Junior College Division |
Principal Investigator |
大橋 良生 会津大学短期大学部, 産業情報学科, 准教授 (50442017)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 財務会計 / 保守主義 / コーポレート・ガバナンス / 株式所有構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,会計実務方針の一つである保守主義に着目し,保守的会計慣行に影響を与える要因,及びその影響の方向や程度を明らかにすることである。 4年計画の第3年度にあたる平成29年度では,主として,前年にまとめた実証的研究のサーベイに基づいて,企業ガバナンスの特性と会計上の保守主義との関係性を分析した。諸外国企業を対象とした先行研究では,概ね強いガバナンスがより高い程度の保守主義に結びついていることが確認されており,保守主義がガバナンス・ツールとして利用されていることが示唆されているものの,日本企業に関する先行研究は限定的であった。 そこで,本研究では,コーポレートガバナンス・コード発効後の監査役会設置会社,2015年施行の改正会社法で導入された監査等委員会設置会社,2003年商法改正で導入された指名委員会等設置会社を対象とし,それぞれの企業統治形態において,企業経営を監査・監督する会社機関の特徴(規模・社外性・会計専門性)と保守主義との関係性の統計的な分析を行った。主たる発見事項は下記のとおりである。(1)監査役会設置会社では,監査役会の特徴が保守主義と関連していることを確認できなかった一方で,取締役会の特徴のうち社外性が高いと保守的な会計が行われていることが示唆された。(2)監査等委員会設置会社では,監査等委員会の規模が大きい企業,社外性が高い企業,及び会計専門性が高い企業において,保守的な会計が行われていることが示唆された。(3)指名委員会等設置会社においては,(A)監査役会設置会社と同程度の保守的な会計が行われていること,そして(B)監査委員会が小さいほど,及び会計専門家の割合が低いほど保守的な会計が行われていることが示唆された。以上の分析結果は,諸外国企業を分析している先行研究と整合的に,保守的な会計が企業ガバナンスのツールとして利用されていることを含意している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,前年度・平成28年度の研究計画の変更を受け,企業ガバナンスと会計上の保守主義との関連性の実証的分析を中心に行った。研究成果は,日本会計研究学会東北部会で報告し,また2本の論文にまとめた。なお,当初の予定では平成29年度に株式所有構造と会計上の保守主義との関連性に関する分析を始める予定であったが,平成28年度の計画変更により,変数の定義づけや必要データの収集など分析手続きがやや遅れている状況にある。ただし,平成28年度に先行研究のレビューをまとめたことで,実証分析に必要な手順を確認できたため,今後の研究計画に大きな変更を必要とするような影響はないと考え,「おおむね順調に進展している」に該当すると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,本研究の最終年度であり,主として,株式所有構造と会計上の保守主義との関連性の実証的分析を行う。分析にあたっては,諸外国企業を中心とした先行研究の成果を基礎として,日本企業特有の実務状況を考慮する。適宜,研究報告を行い,また研究成果の投稿を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は,企業データについて一部を研究の進捗にあわせて購入を延期したことと,研究資料についてインターネットや附属図書館の相互利用で他館からの取り寄せサービスを利用して収集したことで旅費を支出しなかったためである。 繰り越した研究費は,次年度の研究費と合わせ,最新の企業データの購入費用や,研究資料の収集や研究会の参加のための旅費などに使用する予定である。
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