2018 Fiscal Year Research-status Report
地域居住の時代においてサービス付き高齢者住宅入居がもたらす社会的諸関係の変容
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15K17179
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
伊藤 嘉高 新潟医療福祉大学, 医療経営管理学部, 講師 (40550653)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サービス付き高齢者向け住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
山形市内のサ高住でインタビュー調査を行うなかで、本調査を進めるなかでアクターネットワーク理論の方法論的有用性を見出し、事業者と居住者の翻訳過程に着目することになった。そして、以下の課題が浮かび上がってきた。すなわち、「サービス提供者と受給者の健全な対等性を実現させるための仕組み」をいかに構築するかである。そこで、この課題に対してさらに広い視点から質問紙調査を実施するために、福祉サービス運営適正化委員会、地域包括支援センターへのヒアリング等も行った。 これらの調査から明らかになったのは、とりわけサ高住や有料老人ホームといった高齢者賃貸住宅でのトラブルの背景因子として最も多いのは、「契約内容の説明不足と理解不足」であることだ。苦情を出す利用者側においては契約内容をきちんと理解しないまま、苦情を受ける事業者側にあっては説明が不足した状態で契約を締結しているため、苦情を申し立てる側、受ける側それぞれの言い分があるものの、ふたつを媒介するコミュニケーションが生まれていないのである。 他の因子としては、「地域差によって選択できるサービスの幅が狭い場合は、不本意なサービスを選ばざるを得ないことがある」ことであり、さらには「情報の非対称性」である。後者は、事業者の持つ情報と利用者が説明を受ける情報には格差があり、両者の対等性が担保されない原因となり、その結果、相談窓口では、匿名の苦情相談にとどまり、事業者とのコミュニケーションが生まれないのである。 居住者と事業者のコミュニケーションを円滑化するためには、たとば、苦情をマイナスのイメージとして捉えるのではなく、むしろ「正直な事業者が、誠実な対応をしている」というプラスの査定に発展させる仕組みが必要である。国等においても、インターネット等を通したこれらの情報公開を促しているが、現場レベルでは積極的な取り組みはまだまだ見られない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の勤務校が変わったことにより、フィールドワークの実施に際し、大きな地理的・時間的困難が生じた。そのため、当初予定していた、質問紙調査の実施を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度で明らかになった上記の視点を踏まえつつ、新たな調査対象を新潟県内で設定し、当初予定していた質問紙調査を実施する。
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Causes of Carryover |
前述の通り質問紙調査を実施できなかったため次年度使用額が生じた。次年度に質問紙調査を実施し、繰り越し分の助成金を用いる。
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Research Products
(2 results)