2017 Fiscal Year Research-status Report
性暴力事件の裁判に裁判員制度がもたらす影響に関する実証的研究
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15K17191
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
小宮 友根 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (40714001)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エスノメソドロジー / 会話分析 / 裁判員評議 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の主な研究実績としては、模擬評議データの会話分析にかかわる国際学会報告を1本おこない、研究方法論に関する論文を1本公刊することができた。 国際語用論学会の報告では、模擬評議の録画データとミーティングの録画データを用いて、「司会者」がおこなう「意見の求め」の仕方が、「話し合い」の展開に与える影響について考察をおこなった。「話し合い」には複数の活動が含まれており、それゆえ参加者たちには「いま自分たちがどんな活動に携わっているのか」を把握するという課題がある。司会者の「意見の求め」の仕方は、この課題に対する対処法を与えると同時に、混乱を招く要因となることもある。報告内容は2018年度に論文として公刊予定である。 研究方法論に関する論文では、社会学におけるいわゆる「構築主義」の立場について整理をおこなった。「構築主義」はジェンダー研究においてもしばしば掲げられる立場であり、本研究ともかかわりの深い立場だが、それが研究プログラムとして経験的に何をあきらかにできるのかは必ずしも明確ではないことが多い。論文では「概念分析の社会学」の立場からこの点を明確にすることを試みた。 社会学における「構築主義」の興隆は1970年代に社会問題の社会学の分野で起こったが、ただちに理論的困難に直面し、分裂していった経緯がある。論文ではまずその理論的困難(いわゆるOG問題)がどのように生じていたのかを振り返り、それがもっぱら哲学的立場の選択をめぐる問題で、経験的知見の定式化にかかわるものではなかったことを確認した。その上で、社会問題の構築主義の方法論関心を、社会のメンバー自身による社会評価の方法への関心として再定式化し、「概念分析の社会学」がその関心に沿う社会学方法論であることを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度は論文執筆の点ではおおむね順調に進捗したが、学会の業務日程の都合により、例年録画させていただいている模擬評議を録画することができなかった。この点については、過去のデータを分析する中で調査の必要性を検討し、必要に応じて2018年度に調査をおこなうことで埋め合わせたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、これまで収集したデータにもとづく国際会話分析学会での報告を予定している。また、2018年度は最終年度となるため、研究計画全体の成果となる論文を執筆し、投稿する予定である。
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