2016 Fiscal Year Research-status Report
環太平洋越境移動空間の形成と「他者」の排除・受容―在米中国系移民を事例として
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15K17201
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
大井 由紀 南山大学, 外国語学部, 准教授 (10551070)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | チャイニーズ・アメリカン / 生得の市民権 / 太平洋航路 / 海外旅行 / 郵便制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、2017年度に投稿予定の論文の先行研究のレビュー及び資史料収集とをニューヨークのMuseum of Chinese in America、Ellis Island Immigration Museumで、ワシントンDCのNational Archives、National Postal Museum, National Museum of American History, National Air and Space Museum 及びLibrary of Congressを中心に主に行いました。2本論文を投稿予定で、1本目のテーマは、19世紀末の在米中国系移民による移民排斥諸法反対運動がなぜ挫折したのかを、反対運動側の言説と連邦最高裁側の言説を分析から明らかにするものです。2本目はアメリカにおける海外旅行のはじまりとアジアからの移民の接点として、太平洋航路と蒸気船があったことを明らかにするものです。19世紀末にアジアへの「海外旅行=エキゾチックな異文化体験」が始り、増えた時期に、アメリカ国内で「異文化から来た他者=移民」として中国系移民が排斥されたという、「異質さ」をめぐる相反する2つの現象がどのように同時に成立したのか明らかにするものです。ニューヨークでは、東部における中国系移民における排斥・受容の史料と、ヨーロッパから東海岸に到着する蒸気船のパンフレットやポスターを、ワシントンDCでは最高裁判決の史料、蒸気船会社のパンフレット、国内における移動手段の発達、移動ビジネスの発達に関する史料収集を行いました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
9月からアメリカで在外研究期間に入ったことで、史料へのアクセスが容易になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、2016年度に収集した資史料をもとに、論文を2本必ず執筆し、投稿します。第二に、越境移動に用いられた技術の観点から、「異質さ」の構築と排斥・受容を考察します。越境移動に用いられた技術は、これまでも本プロジェクトで扱ってきた蒸気船のほか、排斥対象の移民を区別するために用いられた写真等個人を識別する技術を含めます。技術がどのように「異質さ」の構築や人種主義とかかわっていったのか、分析します。第三に、ニューヨークとサンフランシスコにおけるチャイナタウン形成の比較をすることで、受容・排斥のパタンの比較を行います。
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Causes of Carryover |
9月からアメリカで在外研究を開始したため、海外渡航費が不要になったことが挙げられます。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカ国内での研究旅費に使用する予定です。
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