2017 Fiscal Year Research-status Report
貧困対抗活動の生態系と福祉社会構築に関する社会学的研究
Project/Area Number |
15K17205
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
西川 知亨 関西大学, 人間健康学部, 准教授 (50582920)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 貧困 / 社会活動 / 社会生態学 / 福祉社会 / レジリエンス / シカゴ学派 |
Outline of Annual Research Achievements |
【1.貧困対抗活動の生態系における「『草の根』連帯経済系とソーシャル系の融合の可能性の検討】初年度の研究計画において枠組みを設定したように、本研究における貧困対抗活動の生態系は、「①ネットワーク系、②「草の根」連帯経済系、③グリーン/アース系、④ソーシャル系」に類型化できる。圏域的凝離の傾向にあった「『草の根』連帯経済系」と「ソーシャル系」の融合の可能性を探るべく、「寄付付き商品」を事例として各団体の活動を検討した。その結果、地域福祉の推進とソーシャルビジネスとの関係性の意義、地域貢献ビジネスとしての寄付付き商品の可能性、福祉施設支援の面において、募金が具体的にどのように活用されているか周知することの福祉的・社会的意義などにかかわる個人的・社会的レジリエンスを浮かび上がらせた。【2.「貧困対抗活動の生態系と個人的/社会的レジリエンス」を社会変動論の文脈でとらえなおす】当該年度は、関西地区における新たなフィールドでの調査を遂行しつつ、この枠組みから、それぞれの系統から生み出される個人的/社会的レジリエンスについて、社会変動論の文脈からとらえなおし、共著本を通じて発表した。【3.社会保障と貧困対抗活動】前年度の研究に引き続き、シカゴ学派社会学や社会生態学への非経済的・非政治的側面への批判を踏まえ、貧困に対抗する行政と民間の取り組みと、社会保障との関係性を問う論考が書籍に掲載された。【4. 社会学的ソーシャルワークと福祉社会の構築】貧困等の福祉的課題に対抗する福祉社会の構築に向けて、社会福祉学に補足する課題として、社会生態学と相互作用秩序の問題を設定し、「社会学的ソーシャルワークとその教育法の開発」に向けた準備を進めた。この課題を追求する研究に向けて、学会大会で司会を務めたほか、法学や経済学、政治学などの社会科学の研究者が集う研究ネットワークに参加し組織化を試みた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目にあたる年度において、貧困対抗活動の生態系と個人的/社会的レジリエンスを社会変動論の文脈で検討する論文を共著本という形で発表することができたとともに、福祉社会の構築に関して、社会学の視点からの福祉実践、およびシカゴ学派社会生態学・相互作用秩序論などに基づく「社会学的ソーシャルワークとその教育法の開発」に関する課題設定が可能になったことは、本研究のひとつの進捗状況を表していると考えられるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
貧困対抗活動の生態系に関するこれまでの研究を踏まえて、福祉社会の構築に関して、社会学的ソーシャルワークとその教育法の理論的かつ実践的な研究を推進していく。そのためには、文献・理論的検討に加えて、筆者が有している社会学界のネットワークのみならず、上述の社会科学に関する研究ネットワーク、さらには、平成27年以降、本務校での事業・教育・研究を通じて築いてきた福祉(学術および現場の)のネットワークを活用する。
|
Causes of Carryover |
(理由) 出張費については、関西地区などの近郊を対象としたり、また大学の資源など別資金・制度を利用することができたと同時に、次年度以降の理論的・実践的とりまとめのための資金が必要となったため。 (使用計画) 第1に、前年度に引き続き、新しいものを中心にして、データとしての文献・映像資料の購入が必要であるため、この経費として使用する。第2に、貧困対抗活動の生態系論などにより着想を得た、福祉社会の構築に向けた「社会学的ソーシャルワークとその教育法の開発」の議題設定および理論的枠組みの洗練化を進めるために、内外の社会福祉学および社会学に関する文献・映像資料等を購入する経費として使用する。
|