2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模コホートを活用した、思春期におよぶ学校不適応への早期支援方法の解明
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15K17212
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
磯 笑子 (田中笑子) 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (40727278)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コホート研究 / 社会性 / エンパワメント / 学童期 / 思春期 / 養育環境 / ウェルビーイング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、学校不適応などの学童期、思春期のウエルビーイングに影響する、乳幼児期の関連要因を明らかにし効果的な早期支援方法を明らかにすることである。 生涯発達とエンパワメントの視点から、育児環境や子ども自身の力を引き出し、地域とのつながりを促進する取り組みにより、将来の学校不適応を予防する可能性を検証する。子どもと養育者の特性に注目し、支援を必要とする子どもと養育者への早期支援プログラムを開発、実証することより、乳幼児期から、学童期、思春期をつなぐ根拠に基づく子育て支援システムの仕組みづくりに貢献することが期待される。 平成27年度は、早期支援プログラム開発に向けた根拠の提示を目的とし、量的な多変量解析、先行研究レビューやインタビュー調査を実施した。具体的には、コホートデータを用いて幼児期の育児環境、貧困、虐待、仲間関係、気になる行動、地域とのつながりなどの予測される影響要因について、発達や、学童期以降の学校不適応に及ぼす複合的な影響を、経年的な多変量解析により検討した。量的解析により、養育者への社会的サポートが乳幼児期の育児環境の改善に関連すること、乳幼児期の育児環境に加え、学童期の社会とのかかわりが学童期および思春期の精神的健康に関連することが示唆された。また、海外のコホート研究のレビュー、乳幼児期および学童期の養育環境の特徴について文献検討やインタビューによる情報収集を行い、乳幼児期から思春期におよぶ育児環境や社会的サポートの構造と影響度について質的、量的に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外の学童期、思春期支援機関およびコホート研究機関における知見の情報収集に関して、 学童期、思春期の学校不適応の改善を目指した早期介入支援プログラムと学童期、思春期の学校不適応のリスク要因、防御要因について海外先進機関の訪問調査、既存研究の系統的レビューとエビデンス・テーブル構築を実施する予定であった。系統的レビューについては、予定通り進捗している。一方、欧州の訪問調査予定については、安全上の懸念により延期している。 学童期、思春期の学校不適応をアウトカムとした影響度の検証については、乳幼児期の育児環境や養育者サポート、乳幼児期の社会性、学童期、思春期の社会的かかわり状況などが学童期および思春期の主観的幸福感やストレス反応などの精神的健康に影響していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、質的研究と量的研究のミックスメソッドによる早期支援プログラムの開発と実施を計画している。具体的には、グループインタビューなど質的研究による支援に関する調査、質的量的データの統合と専門職との協働による早期支援プログラムの開発、支援プログラムのプロトタイプの実施と評価である。インタビュー調査では、学童期、思春期の子どもをもつ養育者、保育士、保健師、学校関係者、地域学童クラブ職員など、乳幼児期から学童期、思春期の各時点あるいはそのすべてにおいて、子どもとかかわる当事者と専門職を対象にインタビュー調査を実施し、支援のニーズ、将来のニーズに対して、乳幼児期から支援の必要性があると考えられること、すでに行っている取組みについて把握する予定である。また、平成27年度に実施できなかった海外の先進機関への訪問調査についても合わせて実施予定である。 質的研究の成果を踏まえ、量的研究による根拠と、質的研究による根拠を統合し、「当事者を巻き込み、地域とともに実施可能」という観点から、専門職との討議を重ね、専門職との協働により、早期支援プログラム案を作成し、パイロットスタディを行い、支援プログラム実施と評価を行う計画である。
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Causes of Carryover |
欧州における安全上の懸念が高まったため、予定していた海外渡航による訪問調査を次年度以降に延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に、海外研究機関を訪問し、インタビュー調査等を実施するために使用予定である。
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Research Products
(9 results)