2015 Fiscal Year Research-status Report
軽度身体障害者における援助要請の特性と諸要因の検討および促進に向けた提案
Project/Area Number |
15K17213
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
白神 晃子 信州大学, 地域戦略センター, 研究員 (60548238)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 軽度障害 / 援助要請 / 当事者 / ライフストーリー・インタビュー / 手記分析 / アンケート |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は「軽度身体障害者における援助要請の特徴と関連要因の検討」を行うため、下記の研究を行った。 1)アンケート調査|幼児期から青年期までに援助要請が必要な要素を把握するために、軽度身体障害児を養育した経験のある親に予備的なアンケート調査を行い、82名から回答を得た。特に、入園入学や学校生活における課題が多いことが明らかになった。学校では、入学や進学時の相談が「あった」47%、「時々あった」40%、「なかった」13%であり、相談を持ちかけたのは「学校」13%、「親」68%、「同程度」21%であった。通常学級に通学することの多い軽度身体障害では、親や本人による援助要請が困難な場合に必要な支援につながりにくい可能性が示された。 2)手記の分析|障害開示や援助要請について軽度身体障害当事者がもつ考えや経験を明らかにするため、当事者が書いた手記の分析を行った。対象となる障害者団体の機関紙(2004-2015)から、当事者が著した記事109件を抽出した。 3)インタビュー|先天性上肢欠損の障害当事者1名に、複数回のライフストーリー・インタビューを行った。対象者は、幼少期に親や同様の障害児の親から、援助要請をせずに独力で生活動作を行うことを求められていた。そのため、他人の手を借りずに生活することが自立の目標と考えており、支援機器や自助具、義手等の使用にも否定的な印象を持っていた。さらに一方的に援助を受ける立場であったため、クラスメイトとの関係性にも課題を抱えていた。しかし思春期以降、援助要請を促す友人の働きかけと二次障害の発症をきっかけとして、積極的に援助要請を行うようになっていた。こうした変化は、親子関係や他者との関係性の変化にもつながっていた。本事例から、援助要請意図は環境調整や心理教育によって変容可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに進めている。グループインタビューは実施できなかったが、援助要請において興味深い経験をもつ1事例に複数回のライフストーリー・インタビューを行った。また、当初計画になかった親対象のアンケートでは、困難事例と被援助経験の有無についてデータを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、27年度に引き続き「軽度身体障害者における援助要請の特徴と関連要因の検討」を行う。具体的には、当事者へのグループインタビューと当事者アンケートを実施する。 27年度に行った当事者手記の分析、親アンケートの分析、ライフストーリー・インタビューの分析をおこない、質問項目を検討する。
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Causes of Carryover |
27年度に計上した調査・分析に用いる物品等が未購入であること、予定した学会に参加できなかったこと、もっとも費用を要するグループ・インタビューを28年度実施に変更したことから、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に、27年度計上した調査・分析に用いる物品等の購入、グループ・インタビューを実施し、平成28年度請求額と合わせて当初計画に準じて使用する。
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