2016 Fiscal Year Research-status Report
知的障害者の自立生活を支える権利擁護システムのモデル構築
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15K17216
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
古井 克憲 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (10553018)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 知的障害者 / 権利擁護 / 合理的配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、知的障害者の自立生活を支える権利擁護システムの実態分析を通して、そのあり方を検討し、権利擁護システムのモデルを構築することである。平成28年度は第1に、前年度に引き続いて、国内外における権利擁護に関する先行研究の分析を行った。その結果を「特別支援教育や障害者福祉における知的障害及び発達障害のある人のニーズに基づいた合理的配慮」として論文化し、公表した。そこでは、知的障害者の権利擁護のためには「合理的配慮」の項目を個別支援計画に明確に位置付けることが重要であると述べた。そのことによって、障害者本人と支援者双方が合理的配慮とその必要性について認識することにつながる。さらに計画作成過程そのものが、承認ニーズ(本人顕在・支援者顕在)の確認の場になるのに加え、本人による要求ニーズ(本人顕在・支援者潜在)、支援者による庇護ニーズ(本人潜在・支援者顕在)が表明される機会となる。両者の相談・交渉によって、各々のニーズの調整が行われ、より現実的な承認ニーズに変化し、合理的配慮の実現につながる可能性も見いだせる。 第2に、本研究の対象機関であるAの会の権利擁護システムに対するケーススタディを継続して行った。前年度、権利擁護システムの構成要素のうち、成年後見制度に焦点を当てて、各構成要素の関連を検討することが現在の社会的要請にも応える優先課題であると確認できた。それを受け、本年度はグループホーム(GH)で生活する知的障害者の成年後見人の利用についてGH職員に対する聞き取りや現状把握を行なった。日常生活の支援を担うGH職員と成年後見人、その他の支援者が協働で、障害者本人の最善の利益のために行う意思決定支援の在り方について、パーソン・センタード・プランニングを実践することが権利擁護システムの促進要因につながると検討することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に則り、先行研究の整理・分析及びケーススタディをおおむね遂行できている。さらに、ケーススタディによって「パーソン・センタード・プランニング」「意思決定支援」が、権利擁護システムのモデル構築に向けて重要な条件であると確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、これまで行った研究成果をもとに知的障害者の権利擁護に関する質問紙を作成し、調査を実施する予定である。調査方法については、研究目的に沿ったデータが収集できるように、質問紙を基にした聞き取り調査もしくは郵送調査のどちらが適切かを検討して行う。
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Causes of Carryover |
研究協力者との日程調整の困難さ及びデータ内における個人情報の保護等の理由で、研究者が単独で研究を遂行することが適切と判断したため人件費・謝金を支出する必要が生じなかった。また、本年度は国際学会発表を実施できたが、申請者の予定及び海外事情等を鑑みフィールドワークの実施が困難であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進捗状況に合わせて、研究遂行に必要な物品購入費、国内外のフィールドワーク・学会発表に係る費用、及び今後実施予定の調査において費用が必要な際に使用する。
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Research Products
(2 results)