2015 Fiscal Year Research-status Report
生活困窮対策におけるスティグマの実態に関する調査研究
Project/Area Number |
15K17218
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Research Institution | Nayoro City University |
Principal Investigator |
松岡 是伸 名寄市立大学, 保健福祉学部, 講師 (90433127)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スティグマ / 公的扶助 / 貧困 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は生活困窮者自立支援制度、生活保護制度、福祉的貨幣貸付制度(以下、生活困窮対策)などを利用する人々のスティグマの実態と、それらが制度にどのような影響を及ぼしているのかなど「スティグマの壁」を実証的に明らかにすることである。そこで本年度は生活困窮対策を実施する相談機関・施設の担い手を対象にスティグマの実態に対するインタビュー調査を実施した。本年度の調査研究を整理すれば以下、3点である。第1に、これまでの先行研究や最新の研究成果からスティグマに関する課題の抽出・検討ならびにインタビューガイドなどの作成・検討を実施した。第2に、生活困窮対策を実施する相談機関・施設の担い手を対象としたスティグマの実態に関するインタビュー調査を実施した。第3にインタビュー調査で得られたデータの整理・分析などの実施である(現在、分析継続中)。これらの中で特に、インタビュー調査は、北海道・東北、関東地方、九州・沖縄地方の生活困窮者自立支援関連機関の相談員、福祉事務所のケースワーカー、社会福祉協議会の生活福祉資金等貸付担当者などに対して実施した。 これらの結果、現在、データ分析中であるが、生活困窮対策を実施する担い手側も日々の業務の中や相談援助過程においてスティグマの存在を認識しており、相談援助関係・過程には少なからずスティグマの影響があると考えられる。そして担い手側の立場から、利用者が少なからずスティグマを感受している面が見られることが明らかとなった。これらは生活困窮対策に関する制度実施や相談援助の展開過程に対してスティグマが大きく影響を与えていることを示していると考えられる。これらのことから生活困窮対策の担い手側の立場から利用者が感受するスティグマの実態解明と、利用者、制度、担い手らに見られる「スティグマの壁」を解明する多くの知見を得ることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画(交付申請書)の「研究の目的」及び「実施計画」では、本年度は生活困窮対策の相談機関・施設の担い手に対してスティグマの実態に関するインタビュー調査などを実施する計画となっていた。これらに対して本年度は、インタビューガイドの作成ならびに調査調整・アレンジメント、インタビュー調査の実施など、概ね計画どおりに実施することができた。そして現在進行中のインタビュー調査によって得られたデータの分析作業も順調に進展している。 また既に次年度にむけたインタビュー調査調整・アレンジメントなども概ね順調に進展している。なお、本年度は研究体制も整っており、効果的に調査研究を進めることができ同時に、不測の事態への対応も可能な状態となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の調査研究進捗方策は、研究計画(交付申請書)の「研究の目的」及び「実施計画」に沿って実施される。それは第1に、前年度までの研究成果と最新の研究成果から、生活困窮する人々のスティグマに関する課題の抽出・検討ならびにインタビューガイドの作成・検討、調査日程の調整などを実施する。第2に、生活困窮する人々におけるスティグマの実態を明らかにするために当事者(制度利用者)を対象としたインタビュー調査を実施する。第3に、前年度の調査結果である研究成果を学術学会や研究会などで報告し、学術的交流と本研究へのフィードバックを得ていく予定である。なお当事者へのインタビュー調査では、倫理的配慮を充分におこなったうえで慎重に実施していく。
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