2015 Fiscal Year Research-status Report
障害者雇用を可能にする総合的支援システム構築とコーディネーター役割の理論化
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15K17229
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Research Institution | Niigata Seiryou University |
Principal Investigator |
海老田 大五朗 新潟青陵大学, 福祉心理学部, 准教授 (50611604)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 障害者雇用 / コーディネーター / 就労支援 / デザイン / エスノメソドロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
科研費交付申請書に記載した「研究の目的」、「研究実施計画」に照らせば、平成27年度のタスクは、主に文献研究として、先行研究の選定、最新の研究動向の把握、関係法規の動向の把握を行ない、それらと並行して「高い障害者雇用率を達成している企業を選定し、インタビュー及び実際の現場を観察するためのフィールドワークを実施する。そこでのあるがままの実践を記録し、その記録を解析し、特に注目しているコーディネーターの役割を見出す」と設定されている。実際のところ、平成27年度においては、9箇所の障害者雇用に関する事業所(一般企業10社、就労支援事業所4事業所)で、インタビュー調査並びに観察調査を行うことができた。 このうち3社において、コーディネーターの役割が明確な会社があった。ひじょうにわかりやすい事例として、経済的搾取を発見し、しかるべき社会福祉機関につなげたことで、障害者の権利擁護につなげた事例である。障害者雇用において、最も注意すべき点の一つに、障害者の搾取問題がある。その搾取問題も大きく分けて2つの注意点があり、一つは能力に見合わないほどの低賃金で労働を矯正する場合であり、もう一つは家族による給与の横取りである。一般に前者がいわゆる搾取、後者を経済的虐待と呼ぶが、今回は適正な給与を支払っているはずなのに栄養状態が悪い社員がいて、給与は支払っているはずなのにおかしいと気づいたコーディネーターが家庭に介入するという、ソーシャルワーカー顔負けの事例であった。 この事例以外にも興味深い事例は多数あった。その成果についてはすでに1回ほど研究会で報告され、招待講演で1度話をし、過去に行っていた調査とあわせて1本の事例報告にまとめ、発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実際の障害者の就労現場、9箇所に実際に足を運べ、インタビュー並びに観察調査を行えたという事実は、フィールド調査の観点からいえば、「おおむね順調に進展している」と評価してよいだろう。また、アウトプットとして3回ほど研究会で報告し、1回ほど招待講演で話をし、過去に行っていた調査とあわせて1本の事例報告を学会誌に公刊できたことも、「おおむね順調に進展している」と評価できるように思われる。 他方で、筆者が仮定していたこと以外(以上)のこととして、筆者は基本的にいわゆる一般企業における障害者雇用について研究計画を立てていたのだが、いわゆる障害者就労継続支援施設(特にA型)についても、コーディネーター役割が重要である気づきを得た。今にして思えば、就労継続支援施設A型は、利用者と雇用契約を結び、最低賃金は保証されるので、利用者側からみれば、いわゆる一般労働以外の何者でもない。こうした就労継続支援施設にも、施設によってはコーディネーターのタスクを果たすスタッフがおり、コーディネーター役割の理論化を考えた場合、こうした就労継続支援施設での調査結果についても組み込んでいく必要性を感じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画については、科研費交付申請書に記載した「研究の目的」、「研究実施計画」に照らせば、①追跡調査の実施、②国内外の学会・研究会における報告、③学術雑誌への投稿、④報告書の製本および各都道府県の「都道府県等中小企業支援センター」などへの配本などを射程にいれ、推進していく。その際、コーディネーター役割の理論化を中心に据えるのであれば、さらなる追加追跡調査は必須であるように思われる。実際に調査協力を得られそうな企業については、すでに数社から口頭で調査協力の約束を取り付けており、このような企業や、調査可能な就労継続支援施設に対し、さらなる調査協力を要請する。 また、調査と並行して、研究成果の発表についても行う予定である。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査により録音したものの文字おこしについては、人件費を節約するために、自分で行ったため。翌年度以降は、インタビュー調査の文字起こしや、専門的知識を得るための謝礼などに積極的に活用していきたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インタビュー調査の文字起こしや、専門的知識を得るための謝礼など。
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Research Products
(3 results)