2015 Fiscal Year Research-status Report
カナダ多世代間交流の子育て支援をめぐる場作りの研究―ネイバーフッドハウスの事例―
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15K17241
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Research Institution | Naragakuen University |
Principal Investigator |
岡野 聡子 奈良学園大学, 人間教育学部, 講師 (50623964)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カナダ / 多世代交流 / ネイバーフッドハウス / セツルメント |
Outline of Annual Research Achievements |
セツルメントを源流としたカナダBC州バンクーバー市におけるネイバーフッドハウスの運営方法やサービス・プログラムの実態、利用者・ボランティアスタッフの関係性を調査し、多世代間交流の子育て支援をめぐる場作りについて考察することを目的としている。 平成27年度は、Frog Hollow Neighbourhood House、Kitlano Neighbourhood Houseの参与観察およびインタビュー調査(利用者・ボランティアスタッフ・スタッフ)を実施した。また、カナダのセツルメントの変遷を体系的にまとめ、カナダ・ネイバーフッドハウス研究の第一人者であるブリティッシュコロンビア大学のYan教授のインタビュー調査も実施した。Yan教授からの紹介もあり、Collingwood Neighbourhood House への視察、施設長へのインタビュー調査、Eastend Neighbourhood Houseへの視察、施設長・スタッフへのインタビュー調査、Kiwassa Neighbourhood Houseの視察を実施した。その他、バンクーバー市における多世代交流の場づくりを実施している団体(Volunteer Grandparents、Britannia Community Center)の視察を行った。 研究実績は、奈良学園大学研究紀要「カナダ・ネイバーフッドハウスにおける世代間交流の研究 : フロッグホロウネイバーフッドハウスにおける世代間交流プロジェクトの事例から」(2015.9)を刊行した。また、日本世代間交流学会において「カナダ・フロッグホロウネイバーフッドハウスにおける世代間交流プロジェクトの取り組み~Generating Citizenship Seniors + Youthの実践から~」(2015.10)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に関わる先行研究について、国内外の世代間交流学や隣接領域の文献を分析・検討した。研究計画書では、平成27年度に、Frog Hollow Neighbourhood HouseおよびGordon Neighbourhood Houseを調査研究の対象としていたが、研究施設との協議から、平成28年度に調査研究をする予定であったKitlano Neighbourhood Houseを平成27年度内に調査を実施する運びとなった。 Frog Hollow Neighbourhood Houseの調査結果からは、多世代交流の場づくりとして、7~8月の期間は、公園の一画を間借りしてファミリードロップインプログラムを実施し、同時に同場所においてシニアプログラム(太極拳やヨガといったプログラムの実施)、青少年を対象としたリーダーシップ研修プログラムを開催するといった工夫が見られた。公園というオープンな場所にて多世代交流の場づくりをすることで、地域住民への施設の広報活動の役割を果たし、利用者を増やす結果につながっている。また、シニアプログラムと銘打っていても、誰もが参加ができる仕組みであり、年齢による制限が設けられていないことも特徴である。Kitlano Neighbourhood Houseでは、老人施設を併設し、定期的に預かり保育の子ども達との交流会活動を実施していた。交流の質を高めるためのプログラムを組んでおり、現在、分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の調査研究であるが、平成28年度は、バンクーバー市ネイバーフッドハウス協会主催の研究会に参加をすること、Gordon Neighbourhood Houseにおける参与観察およびインタビュー調査(利用者・ボランティアスタッフ・スタッフ)を実施する予定である。 また、ネイバーフッドハウスの特徴として、一つの施設に地域のニーズに応じた30以上のサービスおよびプログラム(乳幼児の預かり保育、学童保育、雇用プログラム、ランチサービス、シニアプログラム、ホームレス支援)が実施されており、人間のライフサイクルを包括的に支援する体制が取られている。こうした包括的支援体制を支える概念として、コミュニティディベロップメントやコミュニティビルディングといった考え方があり、多世代交流拠点を作る上で、多世代のニーズを充足したコミュニティ構築の在り方について調査を進める必要がある。 そして、大抵のネイバーフッドハウスの施設内にあるギャザリングプレイスと呼ばれる場所が、多世代交流を促す上で重要な場所となっていると考えられる。ギャザリングプレイスが持つ機能を調査し、分析する予定である。 上記のことから、今後の研究の推進方策としては、施設への参与観察およびインタビュー調査を続行すると同時に、多世代交流拠点を作る上で重要となるであろうコミュニティディベロップメントやコミュニティビルディングといった概念を整理する予定である。
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Research Products
(2 results)