2016 Fiscal Year Research-status Report
性被害女性の性と生殖における選択および生まれてきた子どものwell-being
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15K17244
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Research Institution | Higashiosaka Junior College |
Principal Investigator |
小宅 理沙 東大阪大学短期大学部, その他部局等, 講師 (50523536)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 性暴力 / 性と生殖 / 子どものwell-being |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題において、今年度も当事者へのインタビュー調査を実施した。調査結果において特徴的であったのが、事件からの経過時期が長ければ長いほど、以下のような気持ちの変化がみられたことであった。それは、「養子にいった子どもに会いたい」「子どもが現在どこで何をしているのか知りたい」「子どもの写真が欲しい」「子どもと、せめて手紙のやり取りだけでもしたい」などであった。現実には、事件当時に国際養子縁組の選択をしたため、産んだ子どもが今どこの国にいるのか所在自体が不明という事例もあり、実際子どもと再会できた事例は一つもなかった。 しかし、子どもの所在が分かったとしても、産んだ母親(被害女性)の意思のみを尊重してもよいかとの問題がある。つまり、子どもの最善の利益を尊重するのであれば、まずは子どもの「出自を知る権利」などへの検討が必要である。「出自を知る権利」が語られる時、人間には出自を知る権利があり、本人が望めば遺伝子的な親が誰であるかを知らせるべきである、といった主張が聞かれることも多々ある。しかし、子どもの最善の利益を考慮した場合、性暴力や近親姦暴力における事例の場合に、「真実を知らされない権利」が子どもにはあるのではないかということを、検討すべきだと考えている。 以上のような、子どものwell-beingのあり方を検討していくにあたっては、当事者である生まれてきた子どもの実際の声を聴く必要がある。そこで、今後は研究倫理に配慮したうえで、性暴力により生まれてきた当事者への調査研究を実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一度のインタビューにおいて、明らかにできる内容には限界がある。なぜなら、本研究では、当事者がインタビューの場面において、被害当時のことなどを思い返さなければならないからである。被害当時者の自己防衛機能として「解離性健忘」があげられるが、たとえば前回の調査においては被害時期が5年前とされていたのが、今回の調査ではそれが7年前に変わっていたりと、「事実」が何であったか忘れてしまうことが多々ある。継続調査を実施するうえで、整合性の無い内容が確認できたならば、一つ一つの事実の整理が必要となり、そのことの修正作業でインタビューが終了してしまうこともある。当事者自身の事実の確認作業に対する重要性は大きく、また当事者にとって、家族や友人の誰にも語ることができなかったことが「語れる」場所は特別な場面ともいえ、こちらが計画するスピードと、実際の調査の進み方には大きな差異がある。 とはいえ、おおむね計画通りに進んでおり、進行を順調に進展させることにおいて重要なことは、インタビューを少時間で切り上げ、その代わりに回数を重ねることだと実感している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、インタビュー継続調査を実施することに加え、今年度は生まれてきた当事者へのインタビューをしていく。調査の目的は、生まれてきた子どものwell-beingの検討であり、当事者の実際の意見を聴くことなしには、これらの問題を考察することは不可能だと考えている。調査においては、出自は誰からどのように知らされたのか、あるいは出自を知らされたことによる様々な影響について分析していく。 そして、生まれてきた当事者には、様々な宗教観、道徳観、思想・信条などが影響することを仮説とし、調査実施は日本にとどまらず、アメリカ合衆国、インドネシア共和国、韓国や中国において実行する予定である。
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