2016 Fiscal Year Research-status Report
「定式化」作業の相互行為分析に基づく介護職員の専門性の確立
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15K17245
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
城 綾実 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定研究員 (00709313)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 会話分析 / 相互行為 / 規範的構造 / 身体 / 物質性 / 報告の組み立て |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,従来言語化・可視化されてこなかった介護職員の専門性を抽出・体系化し,介護職員の専門性の社会的確立への貢献を目指すものである.具体的には,会話分析という研究プログラムに基づいてケア実践の方針を議論するミーティング場面を精緻に記述し,介護職員の職能との関係を明らかにすることを目的とする.また,こうした研究を通じて,いまだ蓄積の乏しい身体的・物質的資源と相互行為の組織化過程の精緻な記述法の提案も目指す. 平成28年度の成果は次の通りである. 平成28年度は,グループホームの利用者(認知症高齢者)の状態の報告時に用いられる身体的表現を分析する際の視点について,西阪仰が2008年以降指摘している身体や道具の構造に関する知見をもとに検討し,報告を組み立てる際の身体的表現について,ふたつの特徴があることを指摘した.まず,利用者の傷や腫れ,痛みの位置を示すときには,身体の物理的な構造的同形性を利用することが多い.次に,ケアをする介護職員の身体とケアをされる利用者の身体を同時に示すときには,物理的な構造的同形性だけでなく,規範的構造を利用していることが多い.この内容は,2016年5月の保健医療社会学会のラウンドテーブルディスカッションでの話題提供として報告したほか,複数の勉強会・研究会にて検討を重ねた. なお,物質および身体が有する物理的な構造的同形性と規範的構造は,介護職員の報告だけに限らず,相互行為における身体的表現を分析する際に考慮すべき重要な視点である.こうした分析方針に基づいた分析の具体例と相互行為における身体を研究する意義と課題について述べた論文を日本語学に寄稿した.また,相互行為における身体と物質的環境との連関を研究してきたパイオニアであるC. Goodwinの代表的著作を共同で翻訳した内容が紀要に掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に定めた研究対象の分析が遅れてしまった.しかし,平成28年度は研究方法についての議論を想定以上に進めることができ,成果も出すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は7月に国際学会の発表を予定しているので,前半はデータを増やした分析および発表の準備を優先する.そして国際学会での発表で行われる聴者との議論をもとに,8月以降は論文をまとめて投稿することを優先課題とする.
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Causes of Carryover |
本務における役割が平成28年度に想定以上に変化し,極力本務地にて勤務しなければいけない時期が長くあったために,調査に行く回数を大幅に減らし,予定していた海外渡航も断念せざるを得なかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は2つの国際学会で発表する予定であり,それにかかる経費に使用する.また,異動に伴い研究時間の捻出が困難になってきたため,研究補助者や協力者への謝金等にも使用し,最終年度にふさわしい研究成果を上げるべく邁進したい.
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