2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K17254
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
新谷 優 法政大学, グローバル教養学部, 教授 (20511281)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 思いやり目標 / 自己イメージ目標 / 批判の表明 / 異論の表明 / 時間の捉え方 / ゼロサム思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験的に、一時的に思いやり目標を高めるための方法が明らかになれば、思いやり目標と異論や批判の表明の因果関係を明らかにすることができる。そこで本年度の研究は、思いやり目標を実験操作で高めるための方法を確立することを目的とした。63名の大学生の実験協力者を(1)自分は恵まれていると感じたときのことについて書かせる群、(2)自分が周りの人からどのような人だと思われたいと思うかについて書かせる群、(3)前日の主な活動について書かせる統制群、の三群にランダムに振り分け、作文課題を行わせた後、「今現在」の思いやり目標と自己イメージ目標を測定した。自己の恩恵について記述した群は、統制群よりも思いやり目標が高く、他者への印象操作について記述した群は、統制群よりも自己イメージ目標が高くなると予測していた。しかし、思いやり目標も自己イメージ目標も三群間で有意な差が見られなかったため、操作は効果がないことが明らかになった。 また、前年度に明らかになった思いやり目標と非ゼロサム的思考との関連をより詳しく検討するため、ウェブ調査を二回実施した。一回目の調査(n = 501)では、対人目標、関係性・能力感・自律性のニーズの充足、ウェルビーイング、ストレス、時間に対する考え方、客観的な忙しさを測定した。その結果、自己イメージ目標が高い人ほど、ゼロサム的な時間の捉え方をし、ニーズが充足されにくく、ウェルビーイングが低く、ストレスが高い反面、思いやり目標の高い人ほど、時間をゼロサム的に捉えず、ニーズが充足されやすく、ウェルビーイングが高く、ストレスが低いことが明らかになった。二回目の調査(n= 349)は、時間に対する捉え方尺度の再テストによる信頼性を確認するために、約二週間後に行ったが、時間に対する捉え方は中程度の相関を示したことから、ある程度、状況によって変化しうるものであることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
思いやり目標を実験的に高める方法を確立し、それを用いた実験を計画していたが、計画していた方法では思いやり目標が高まらなかったため、次の実験に移行できなかった。思いやり目標の操作方法について他の研究者と意見交換を行い、情報収集を行った結果、新たな方法が見つかったので、実験を再開した。当初の計画よりは遅れてはいるものの、その間、思いやり目標とウェルビーイングやゼロサム的な時間の捉え方に関する知見も得ることができたので、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、思いやり目標を実験的に高める方法を確立し、思いやり目標と異論・批判の表明の因果関係を明らかにする実験を行う。具体的にはKao, Su, Crocker, & Chang (2016)の方法を応用する。参加者をランダムに二群に分け、それぞれ異なった記述課題を行ってもらう。思いやり目標群には、思いやり目標に関連する5つの価値観(共感、協力、社会への貢献、寛容さ、相互サポート)を重要さの順にランキングしてもらった上で、そのうち最も重要だと思う価値観について、なぜそれが一番重要だと感じたかについて記述をしてもらう。もう一方(統制群)には、コンビニで販売される食べ物について、よく購入する順にランキングしてもらった上で、なぜそれを一番よく購入するかについて記述してもらう。両群とも、記述後に「今現在」の思いやり目標と自己イメージ目標について回答を求める。 予測通り、思いやり目標が、統制群よりも思いやり目標群で高くなっていれば、次の実験ではこの操作を用いて、思いやり目標を高める群と高めない統制群を設定し、異論の表明の頻度に違いがみられるか調べる。 万が一、思いやり目標を高める実験に再度失敗してしまった場合は、実験参加者の対人目標を個人差変数として測定した上で、実験状況において、異論の表明を行うかを測定する。
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Causes of Carryover |
思いやり目標を実験的に高めることが、異論の表明を容易にするかを調べる実験を計画していたが、思いやり目標を実験的に高めるための方法が確立できなかったため、実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
思いやり目標を実験的に高める方法を検討する実験を再度計画しているので、差額を実験参加者への謝金として用いる。上記「今後の推進方策」に示しているように、思いやり目標に関する価値観について記述させる群と、コンビニでよく購入する食べ物のについて記述させる統制群を設け、記述後に思いやり目標と自己イメージ目標を測定する。
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