2017 Fiscal Year Research-status Report
市民参加の持続性と多様性をもたらすコミュニティ組織運営手法の開発
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15K17256
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
高橋 尚也 立正大学, 心理学部, 准教授 (10581374)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 協働 / 行政と市民 / 地域活動推進スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の計画は、これまでの研究で得られた知見を地域活動運営支援として実際に展開するための基盤づくりと事前状態の把握であった。この目的に沿って4つの研究を実施した。 第1は、地域活動運営スキルを地域活動関与者500名を対象にWEBによる質問紙調査を実施し、その構造を精緻化したことである。概ね前年度の大学生調査と類似した「初心と呈示」「ポジティブ忍耐」「抑制関与」「配慮対応」の4因子が抽出された。その上で、どのスキルが社会変革へのコミットメントを規定するかを分析したところ、初心を忘れず傾聴姿勢を呈示す る「初心と呈示」がいずれの社会変革へのコミットメントにも促進効果を有していた。他方、地域色が強いコミットメントと考えられる内容に対しては、どんなことでも楽しく引き受ける「ポジティブ忍耐」の促進効果がみられた。 第2は、自治体職員および地域活動関与者に対する両者のイメージに対する定性的把握を自由記述形式調査で実施したことである。少数の対象者であるため、知見を一般化することは厳しいが、内容分析を通して相互の事前把握が可能となった。 第3・第4の研究は、当初の研究計画では想定していなかったが、前年度の研究結果の分析過程で行政と市民とのコミュニケーション期待を分析する必要があると考えられたため、新規に実施した。第3は、行政から市民に対するコミュニケーションスタイルを把握するため、東京23区の自治体が作成しているTwitterの内容分析研究に着手した。第4は、行政に対する援助要請がどのような場面で期待されているかを把握する質問紙調査を実施し、行政職員に対する援助要請期待内容は、ストレッサーに対する対処に関する内容が多いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の積み残し事項については、本年度中に新規に研究を実施することができ、予測に沿った知見が得られている。また、日本における行政と市民のコミュニケーションのスタイルに関して当初の計画になかった新規の研究も実施することができ、それらの研究成果も出揃いつつあると判断される。 本年度の最大の進展は、コミュニティ組織運営手法の開発に当たって、SCRAに参加した際にMarc Zimmerman教授と知己を得て貴重な先行プログラムを発見できた点である。アメリカ合衆国(University of Michigan)で行われている「Youth Empowerment Solutions」である(Zimmerman, et al, 2018)。このプログラムの内容を精査しつつ参考にできる点を引用することで、本申請課題の全体目的であるコミュニティ組織運営手法を深化させることへの道筋が開けてきたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
来たる年度は最終年度であり、本課題のまとめを実施ていく必要がある。「Youth Empowerment Solutions」のcivic efficacyやleadership efficacyの内容を参考にしつつ、これまでの本研究で得られた社会変革へのコミットメントや、地域活動運営スキルを高めるプログラムを提案し試行することと、多様な意見を把握するための仕組みを提案していくことが必要である。当初計画では、多様な意見を把握する仕組みと、持続可能な組織運営を2つ合わせた組織運営手法を提案することを目標としていたが、計画を一部変更し、両者を分離し、評価可能な手法を提案することを目的としてく。
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Causes of Carryover |
本年度実施予定のWEB調査の金額が、当初予定より大幅に安価に実施できたことと、新規に実施した研究の調査対象者が大学生対象であり謝品等の支出が少なかったことが次年度使用額が生じた理由である。次年度については、本年度新規研究を複数実施したため、その成果発表の学会参加費・出張費に充当する予定である。
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