2015 Fiscal Year Research-status Report
反すうと思考抑制が抑うつの悪化をもたらす過程に関する研究
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15K17258
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
服部 陽介 京都学園大学, 人文学部, その他 (40733267)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 思考抑制 / 反すう / 侵入思考 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,反すうと思考抑制に注目し,抑うつ症状の悪化・慢性化の背景にある認知過程を究明することを目的としている。平成27年度は,反すうと思考抑制の因果関係を整理することを試みた。まず,大学生を対象に,反すうの程度を測定する尺度である日本語版Ruminative Responses Scaleと,思考抑制の習慣的努力と侵入思考経験の頻度を測定する尺度である日本語版White Bear Suppression Inventory (WBSI) を用いた3か月の縦断調査を実施した。その結果,反すうの中でも,現状と達成できない水準との消極的な比較である考え込み傾向が侵入思考の経験によって強まることが示された。一方で,思考抑制の習慣的努力と反すうの関係は確認されなかった。また,先行研究で報告されていた,思考抑制とストレス経験との相互作用によって反すうが促されるという結果も確認されなかった。これらの結果は,日本社会心理学会第56回大会にて発表され,現在,国内の学術雑誌への投稿準備中である。 また,反すうには,ネガティブ気分への反応として経験される受動的側面と,自己理解のための方略として利用される能動的側面があると考えられる。Leuven Adaptation of the Rumination on Sadness Scale (LARSS) は,反すうの原因分析,理解,制御不能の3つの側面を測定する尺度であり,これらの両側面を反映する指標として利用可能であると考えられた。そこで,LARSS日本語版と日本語版WBSIを用いて,思考抑制の習慣的努力と侵入思考経験が受動的反すう・能動的反すうと関連する可能性について検討した。その結果,思考抑制の習慣的努力を行う傾向が強いほど,また,侵入思考を経験する傾向が強いほど,受動的反すうを経験しやすく,能動的反すうを行いやすいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に作成することを予定していた,受動的反すうと能動的反すうの程度を測定するための尺度は,新たに出版されたLARSS日本語版によって代用可能であると考えられる。さらに,この尺度を用いた調査による,思考抑制と反すうの因果関係についての検証にも着手しており,十分な研究の進捗がみられるといえる。また,思考サンプリング法を用いた実験についても予備実験と本実験の実施準備が進行中であり,概ね計画に沿った進捗がみられるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い,調査研究と実験研究を並行して進める。具体的には,LARSS日本語版とWBSIを含む複数の尺度を用いた縦断調査を行い,思考抑制が受動的反すうと能動的反すうを介して抑うつ症状の悪化・慢性化を導くという仮説モデルを検証する。また,思考サンプリング法と思考抑制パラダイムを用いて,思考抑制が受動的反すうに与える影響を検討する。
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Causes of Carryover |
研究発表用のための旅費について,現地での滞在日数を短縮する必要が生じたために,当初の予定よりも宿泊費および日当分が減額された。その結果,予定額と使用額との間に差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,新たに日本感情心理学会第24回大会に参加する予定であり,繰り越しをした分の金額を含めて,国内外の学会ならびに研究会での研究発表のために使用する予定である。
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