2017 Fiscal Year Research-status Report
反すうと思考抑制が抑うつの悪化をもたらす過程に関する研究
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15K17258
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
服部 陽介 京都学園大学, 人文学部, 講師 (40733267)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 思考抑制 / 反すう / 抑うつ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,抑うつ症状の悪化・慢性化を促す要因とされる反すうと思考抑制の因果的関係を明らかにすることを目的としている。平成29年度は,現状と達成できない水準との消極的な比較である考え込みと,問題解決に向けた自己に関する能動的な思考である反省的熟考という,反すうの2つの側面が,思考抑制の逆説的効果に与える影響について検討するために,大学生97名を対象とする実験を行った。参加者は,受講している講義の成績評価について考えないようにするよう求められた。その結果,反省的熟考傾向が強いほど,思考抑制中に抑制対象について考える現象である,即時的増強効果を経験しやすいことが示された。さらに,思考抑制が困難な状況で思考抑制に取り組んだ場合,反省的熟考の傾向が高い個人ほど,思考抑制後に抑制対象について考える現象である,リバウンド効果を経験しやすいことが示された。これらの結果は,日本社会心理学会第58回大会で発表された。さらに,抑制対象をシロクマに変更した同様の実験を行い,すべての実験結果を統合したうえで追加分析を実施した。その結果,抑制対象の種類に関わらず,思考抑制が困難な状況で思考抑制に取り組んだ後に,反省的熟考の傾向が高い個人ほどリバウンド効果を経験することが示された。この結果は,今後開催される,国内学会で報告する予定である。 また,思考抑制と反すうの相互の影響関係について,1か月の縦断的調査によって検討を行った。10代から50代の男女387名を対象にWeb上で調査を行った。その結果,慢性的な思考抑制傾向が強いほど反すう傾向が強まり,また,反すう傾向が強いほど慢性的な思考抑制傾向が強まるという相互増強的な影響がみられることが明らかになった。これらの結果は,平成29年度に開催される国内学会で報告が予定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成29年度に予定していた思考抑制傾向と反すうへの介入は,思考抑制,反すう,抑うつの3変数間の因果モデルを前提としている。縦断的調査と思考サンプリング法を用いた実験により,思考抑制と反すうの関連を整理されつつあるものの,因果モデルについて十分な検証を終えたとはいい難く,さらに検討を続ける必要がある。その結果,研究の進捗に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
調査研究と実験研究により,思考抑制,反すう,抑うつの3変数間の因果モデルの検証を可能な限り迅速に進める。その後,当初の計画に則り,思考抑制傾向と反すうを弱めるための介入を行い,それぞれが,思考抑制傾向と反すうを介して,抑うつ症状を低減する可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
想定よりも実験参加者の募集に多くの時間を要してしまい,予定していた実験を期間内に実施することができず,変数間の因果モデルの検証が遅れてしまった。また,得られた結果の頑健性を確認するための再現実験・調査を行う必要があると判断した。次年度は,当初の研究計画に則って,変数間の因果関係を検証するための実験ならびに思考抑制傾向と反すうへの介入実験の実施と,成果の報告のために助成金を利用する予定である。
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Research Products
(3 results)