2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17259
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
藤原 健 大阪経済大学, 人間科学部, 講師 (00707010)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 身体的同調 / 非言語行動 / 対人コミュニケーション / 周波数解析 / ウェーブレット解析 / 自動計測 / 小集団会話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,集団の知的生産性の向上を予測する集団的知性(collective intelligence)の機序をコミュニケーション特徴の視点から明らかにすることである。そこでまず,各成員のコミュニケーション行動を個別的ではなく集合的に捉えるために,身体的同調に着目することとした。初年度となる平成27年度は自然会話時における行動データの自動取得手法(e.g., Fujiwara & Daibo, 2014)を応用し,姿勢の類似や行動の同時生起,リズムの類似(Bernieri & Rosenthal, 1991)といった視点から身体的同調を定量化・評価する方法論の確立を進めた。 2年目となる平成28年度は,初年度の成果を受けて実際の集団会話場面を対象に身体的同調を取得し,会話の成果との対応を検討した。具体的には,3人集団によるブレインストーミング課題を実施し,創出されたアイデアの量と質について身体的同調との関連を検討した。まず,3人集団の身体同調を周波数解析によって抽出することの有用性について検証し,実際に会話した集団の方が数人を他集団成員とランダムに入れ替えた疑似集団よりも身体同調のスコアが高くなることを明らかにした。この結果は,日本社会心理学会第57回大会にて発表された。また,そのうえで,創出されたアイデアの量と質との関連について解析し,算出した身体的同調のスコアが高い方がアイデアの創出量は増えるものの,出てきたアイデアの質は身体的な同調をしているときの方が低いことが明らかになった。この研究知見はヒューマンインタフェース学会論文誌に掲載が決定した (研究代表者は主にデータ取得と分析を担当し,第三著者として連名となっている)。集団的知性を予測するうえで身体的同調が達成されるだけでは不十分であり,境界条件が存在することを明らかにできたことは平成28年度の成果であったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,平成27年度に定式化した身体的同調の評価方法を用いて,実際の小集団コミュニケーションを対象にデータ取得・解析を進め,集団的知性のモデル化を進めることができた。具体的には,発散的なアイデア創出において,アイデア量を確保するためには成員同士に身体的同調が達成されることが望ましい一方で,得られたアイデアの質は身体的同調をしているときの方が低い評価を受けることを示した。このことから,身体的同調を集団的知性の関連を考えるうえで境界条件が存在することを明らかにできたといえる。得られた知見はすでにヒューマンインタフェース学会論文誌に掲載が決まっており,研究の進捗状況はおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況としては,概ね交付申請書に記載した通りに進んでいる。最終年度となる平成29年度には,身体的同調から集団的知性にいたる媒介過程を明らかにすることを予定している。
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Causes of Carryover |
平成28年度に実施した実験について,謝金の額が予定よりも減額したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度となる平成29年度には,本研究課題の成果を広く公表していく必要がある。そのため英文校正費として支出し,より影響力の高い国際誌で掲載を狙う。
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