2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17261
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Research Institution | Hiroshima Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
井川 純一 広島文化学園大学, 社会情報学部, 講師 (90748401)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バーンアウト / 行動実験 / 情熱 / 報酬 |
Outline of Annual Research Achievements |
「燃え尽き」という邦訳が示すようにバーンアウトは「がんばりすぎ (仕事に対して情熱を持った結果)」というプロセスを含んだ概念である。しかし、申請者らが過去に行った研究では、現在世界的に使用されているバーンアウト尺度 (MBI, Maslach Bunrout Inventory) では、「がんばりすぎ」というプロセスに関係ないストレス反応までが高バーンアウトとして検出されることが示唆されている。本研究では、行動実験を中心とした一連の研究により、典型的バーンアウトを抽出し、そのメカニズムを検討することを目的としている。平成27年は学生を対象としてバーンアウト状態を実験的に再現することを目的とした。 実験参加者は対人援助職としてのロールを割り当てられ、クライアントと仮想的な手紙のやり取りを行い、その間の精神的消耗度の変化をVAS (Visual Analog Scale) を用いて測定された。実験参加者の情熱の指標として労力指標、時間指標、主観指標を用い、報酬をランダムにフィードバックすることで、情熱と報酬が精神的消耗度に与える影響についての検討を行った。一度のセッションで質問紙調査の結果を追認した予備実験では、質問紙調査と同様に情熱の強度は精神的消耗度の要因とはならないことが明らかとなった。2度のセッションで情熱の変化を検討した本実験ではセッション間で精神的消耗度が蓄積し、1度目のセッションで報酬が得られなければ、精神的消耗度は減少し、情熱の強度が維持されないことが明らかとなった。一方、個人の特性として理想・使命感が高ければ報酬が得られなくても情熱が持続した。これらの結果から, 典型的バーンアウトとは, 報酬が得られない状況であっても、理想・使命感によって行動を繰り返し, 結果として精神的消耗が蓄積した状態であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請前に予備実験を既に行っていたこと、申請後、年度開始前に理想や使命感を要因に入れた繰り返し実験を行うことができたため、平成27年度は再分析、学会発表、論文執筆等を中心とした活動を行った。また以降の実験・調査にむけて報酬に関連した小規模の調査を行い、研究計画の見直しを行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、実際の現場で働く看護師を対象とした質問紙実験 (研究1)、及び行動実験 (研究2) を行い、学生を対象に行った行動実験の結果が再現されるかを確認する予定であった。 このうち、場面想定法を用いた質問紙実験 (研究1)については、研究計画どおりに通り行う。研究2の行動実験については、平成28年の結果を踏まえさらに要因を統制し、セッションの回数を増やした実験を学生を対象に行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては当初よりも研究計画が順調に進んだため、計上していた人件費を使用しなかったことにある。研究計画の進展に合わせて学会発表等の予定を追加し、分析等の環境を整えたが、一部研究費が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、図書の購入を増額、海外発表のための校閲費等で使用することを計画している。
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Research Products
(5 results)