2015 Fiscal Year Research-status Report
乳児期における情動とアタッチメント:関係性のオーガナイザーとしての情動に着目して
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15K17264
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
本島 優子 山形大学, 地域教育文化学部, 講師 (10711294)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情動 / アタッチメント / 乳児期 / 縦断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の社会情動発達の研究のあり方は、アタッチメントが子どもの情動や情動制御の発達にいかに影響するかというアタッチメントの「後」を問うものであった。本研究は、アタッチメントの「前」、すなわち日常生活の諸事象の中で徐々に優位化する情動経験の蓄積がいかに親子に固有のアタッチメントの質の形成を先導するかという問いに焦点を当て、その実証的検証を図ることを目的としたものである。具体的には、(1)生後1年目(2~12ヵ月)において、生得的な気質要因に加え、養育者自身の情動スタイルや養育行動に起因して、どのように子どもの情動の特質(ある特定の情動の優勢化など)が形成されていくのか、(2)生後1年目における子どもの情動の特質が生後2年目(18ヵ月)におけるアタッチメントとどのように関連するのかについて、生後2ヵ月から18ヵ月にわたる縦断データに基づいて、実証的検討を行う。 一年目は、本研究のベースとなるMalatesta-Magaiの理論(アタッチメント安定型の子どもは相対的にポジティブな情動を、回避型の子どもは恐れの情動を、抵抗型の子どもは怒りもしくは悲しみの情動を中核としてアタッチメントの組織化が進行していく可能性を論考している)の理解を深め、かつMalatesta-Magaiの仮説を支持し得る、間接的な研究知見についてレビューを行った。そして、レビューの知見を踏まえて、特により最近のSherman et al. (2013) の研究を参考にしながら、具体的な縦断調査の計画を立て、必要な実験や観察、質問紙などの手続きの検討を行った。また、乳児の情動や行動を評定するための分析手法についても専門の研究者に助言を求めて準備を進めた。以上の準備状況を踏まえて、次年度は研究協力者の募集を開始し、縦断調査の実施を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度は縦断調査の実施に向けての事前準備を進め、Malatesta-Magaiの理論および先行研究のレビューを精力的に行い、また実験や観察、質問紙などの調査手続きの検討・確認を行った。次年度以降に開始する縦断調査に向けての準備は十分に整っていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力者として親子約50組の募集を開始する。協力者は市内の産婦人科・小児科・保健所・地方紙などでの広告掲示およびホームページでの案内を通して募集する。 次年度は生後2ヵ月・4ヵ月・6ヵ月の縦断調査の実施を目指す。情動に関わる諸要因として、養育者の養育行動(Emotional Availabilityなど)、養育者の情動経験(不安・抑うつなど)、養育者の(乳児に対する)情動表出、乳児の気質などについて測定を行う。また、乳児の情動の評価として、養育者のいる文脈での情動表出(Still Face法など)と養育者のいない文脈での情動表出(喜び喚起場面、怒り喚起場面、悲しみ喚起場面などの実験場面)についてAFFEX(Izard et al., 1983)のコーディング・システムに基づいて、乳児の個別情動(喜び、怒り、悲しみ、恐れなど)の評定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当年度は縦断調査の実施に向けての事前準備が中心であったため、調査遂行のための諸経費(調査協力者への謝礼、実験補助の人件費)が不要であった。また、当初購入予定であった備品(ビデオカメラ等)を次年度以降に購入することにしたため、結果として当該年度に剰余金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は縦断調査を開始するため、調査遂行のための諸経費(調査備品の購入、調査協力者への謝礼、実験補助の人件費)を要する。次年度使用額も含めて、次年度の予算は主にこの調査関連経費に充てる予定である。
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