2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17267
|
Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
奥村 太一 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (90547035)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 検定力分析 / 正確度分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,検定力分析と正確度分析との関連について統合的観点から検証することに取り組んだ。検定力分析の必要性は心理学研究において古くから指摘されており,アメリカ心理学会等の指針においても行われることが強く推奨されている。一方,正確度分析とは信頼区間の幅を母集団効果量推定の正確さと考え,その幅を一定以下に抑える観点から標本サイズを設計することである。検定結果のみを関係性や効果の有無を表すものとして報告することの弊害についても数多くの指摘があり,分析結果の報告においては効果量の信頼区間を報告することも多くの学会によって推奨されている。 ここで,検定と推定にはよく知られた密接な関係がある。すなわち,効果量の信頼区間がゼロを含まないということと,検定において母集団効果量をゼロとした帰無仮説が検定おいて棄却されることは同等だということである。このことは,検定力分析と正確度分析についても別個に扱われるのではなく,それらを統合的に解釈することの必要性を示唆している。しかしながら,現実的にはこれらの関係性について言及されることはこれまでほとんどなく,標本サイズの設計式も検定力分析と正確度分析それぞれが別個に提示されるにとどまってきた。 独立な2群の平均の比較に関して,検定力分析と正確度分析の関係について検証したところ,以下のことが明らかになった。まず,母集団標準偏差を既知とした場合,検定力は母集団効果量δと標本効果量の信頼区間の幅wとの比T(と有意水準)によって定まることがわかった。具体的には,例えばT=1.0の場合の検定力は97.5%に相当し,T=0.5の場合は検定力50%となっていた。逆にいうと,ある一定の検定力を満たす標本サイズを求めようとする場合,母集団効果量が大きいと考えるほど,信頼区間幅は広くてよい(すなわち推定の正確さは低くてかまわない)と考えていることになるということである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単一事例実験というテーマからは若干離れたが,検定力分析と正確度分析の関係について意義のある知見を見出すことができたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
単一事例実験におけるトレンドを考慮した効果量に関して,検定力分析と正確度分析の双方の観点から統合的に標本設計を行えるよう研究を進めてゆく予定である。
|
Causes of Carryover |
研究の進捗状況に鑑みて,全て使い切る必要はないと判断した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進捗状況に鑑みて,適切に使用する。
|