2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17269
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
中道 圭人 静岡大学, 教育学部, 准教授 (70454303)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 幼児 / 反事実的思考 / 反実仮想 / 因果推論 / 認知発達 / 領域特殊 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,心理的事象に関する下位領域(感情,知識状態)に注目して,幼児の反事実的思考の発達を検討した。 実験Ⅰでは,4-6歳児を対象に,平成27年度に作成した実験課題を部分的に改良した2種類の反事実課題(感情課題3問,知識課題3問)を行った。たとえば,感情課題では「主人公はお菓子を持って,庭で花を見て,嬉しい気持ち⇒犬が花を踏む⇒主人公は悲しい気持ち⇒主人公はお菓子を落とす⇒主人公はとても悲しい気持ち」,知識課題では「主人公はある花と果物の色を知らない⇒姉が花の色を教える⇒主人公は花の色を知る⇒姉が果物の色を教える⇒主人公は花と果物の両方の色を知る」といった内容の物語があった。それぞれの物語の後,参加児は統制質問2問と反事実質問を尋ねられた。予備的な分析の結果は以下の通りであった:1. 課題遂行は4-5歳群(正答率 = 36.3%)より5-6歳群(正答率 = 54.0%)で良かった;2. 課題遂行は知識課題(正答率 = 29.3%)より感情課題(正答率 = 61.3%)で良かった。 実験Ⅱでは,物語の主人公の感情状態に注目させることが幼児の反事実的思考を促進するかを検討した。具体的に,4-6歳児を対象に,実験Ⅰと同様の手続きで感情課題を実施する場合(統制条件)と,物語の途中で主人公の感情状態に注目させながら感情課題を実施する場合(感情注目条件)での遂行を比較した。予備的な分析の結果は,以下の通りであった:1. 課題遂行は4-5歳群(正答率 = 27.0%)より5-6歳群(正答率 = 49.3%)で良かった;2. 課題遂行は統制条件(正答率 = 31.3%)より感情注目条件(正答率 = 46.0%)で良かった。 これらの実験は,ヒトの感情状態に関してなら,幼児が反事実的に思考できることを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の実験では,心理的事象の下位領域であっても反事実的思考の遂行が異なり,特に感情的な事象に関して幼児は反事実的に思考できることが示された。これは,既有の知識状態が推論に影響する可能性を示すと共に,「なぜ感情状態についてなら,幼児は反事実的に思考できるのか?」という新たな問いを提案する結果であった。 また,上記の実験以外に予備的な実験を行うと共に,平成28年度では先行研究を再度レビューし,来年度の実験を構想中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には,以下の3つの方向性を予定している。 1. 平成28年度の実験結果を踏まえて,追加の確証的な実験を行う。 2. 反事実的思考が他の思考の際にどのように使用されているかを検討する。現時点では,反事実的思考と「感謝することの理解」の関連についての実験を構想している。 3. これまでの研究成果を学術論文としてまとめる。
|
Causes of Carryover |
平成28年度中は,2017 SRCD biennial meeting (Austin, TX)への参加を予定していた。しかし,開催日程が平成29年4月6日~8日であったため,予定の予算(参加費,旅費)を使用しなかった。このため,当該の次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該の助成金は2017 SRCDへの参加のために使用し,翌年度分として請求した助成金は研究実施や他の研究発表のために使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)