2016 Fiscal Year Research-status Report
汚染恐怖による強迫性障害に関する認知行動療法的研究
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15K17292
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 亮太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (80625608)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 強迫性障害 / 認知理論 / 汚染恐怖 |
Outline of Annual Research Achievements |
強迫性障害は、意志とは無関係に繰り返し頭に浮かび不快感を生じさせる強迫観念と、強迫観念を振り払うため繰り返し行う強迫行為からなる(APA, 1994)。世界保健機構によれば、強迫性障害は身体疾患を含む全ての疾患の中で,生活を破綻させる疾患の第10 位とされている(WHO, 1999)。強迫性障害の認知理論によれば、強迫性障害は過剰な責任感といった認知的要因によって維持・悪化されている(Ishikawa et al., 2014)。なかでも汚染恐怖(不潔恐怖)による強迫性障害は、「自分(または家族)に汚れがついているかもしれない」という強迫観念と,汚れを除去するために過度な洗浄行為を繰り返してしまう強迫行為(洗浄強迫)が主症状である。強迫性障害の患者の約半数は、汚染恐怖の症状を持つと報告されている(Rasmussen, 1992)。申請者は、実験と質問紙調査によって、汚染恐怖を悪化させる要因を検討した。 実験)汚れた手袋を実験参加者(健常大学生)に提示し、汚れた手袋を身に着けてもらう実験を行った。その結果、嫌悪感受性や過剰な責任感が高い大学生は、汚れた手袋を身に着けると高い汚染恐怖を感じることが示された。さらに魔術的思考の高さは、手袋を装着した際に生じる変身恐怖(Fear of Morphing)を予測する可能性があると示唆された。 調査)大学生を対象に質問紙調査を行った。その結果、不潔恐怖のサブタイプである変身恐怖を測定する尺度(日本語版変身恐怖尺度)の妥当性が検証された。さらに階層的重回帰分析の結果、魔術的思考や対人不信感といった認知的要因が、精神的汚染や変身恐怖を予測することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は汚染恐怖に関する質問紙調査および実験を行うことができた。さらに臨床患者(強迫症患者、不安症患者、うつ病患者)を対象にした質問紙調査をスタートすることができた。現在は、目標列数までのデータを収集中である。 実験においては、過剰な責任感や嫌悪感受性が汚染恐怖を予測する要因であることが示されたものの、それ以外の新たな知見を得ることができなかった。理由としては健常大学生を対象にした実験の限界があったと考えられる。 質問紙調査においては、魔術的思考や対人不信感といった、これまで指摘されてこなかった認知的要因が汚染恐怖(精神的汚染恐怖や変身恐怖)を予測する認知的要因であることが示された。この知見は、強迫性障害の認知行動病理学に新たな知見を提供するものであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在収集している、臨床群(強迫症群、不安症群、うつ病群)の質問紙データを解析し、不潔恐怖が悪化させる認知的要因を解明していく。仮説として、精神的汚染や変身恐怖といった強迫症状は、抑うつ、不安、嫌悪感受性といった変数の影響を統制した場合でも、魔術的思考や対人不信感といった変数によって予測されるだろう。当該結果を論文化し、国際学術雑誌に投稿していく。さらにどのような認知行動療法が、不潔恐怖を改善させるのに有効なのかを検討していく。
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Causes of Carryover |
28年度に購入するはずの書籍や雑貨等があったが、研究の進捗状況に伴い先送りとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に、当該図書・雑貨を購入する。
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Research Products
(1 results)