2015 Fiscal Year Research-status Report
うつ・不安の予防・改善のためのインターネット心理援助プログラムの開発と効果検討
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15K17295
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
梅垣 佑介 奈良女子大学, 生活環境科学系, 講師 (00736902)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インターネット心理援助 / iCBT / 援助要請 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,インターネット上で提供可能な心理援助プログラムのコンテンツの開発を主な目的としたため,成果として公表できたのは研究論文1件(下記1))であった。当該研究は,インターネット上で提供される心理援助がうつ・不安に苦しむ当事者の援助要請行動を促進し,心理援助サービスにおけるギャップを埋めることに役立つのかを明らかにすることを目的とし,インターネット上で心理援助サービスを提供した効果研究をレビューした内容である。ランダム化比較試験(RCT)を用いて援助要請行動の状況を検討した研究の数は限られるものの,そういった研究の結果から,インターネット上で提供される心理援助が援助要請行動を促進する可能性が示された。インターネット上で提供される心理援助を体験することで今後本人が受けるかもしれない対面式心理援助サービスへの抵抗が少なくなり,対面式のサービスへの移行が行われやすい可能性が示された。本研究の結果から,インターネット上で提供される心理援助は決して対面式の心理援助に取って代わられるものではなく,対面式の心理援助と相補的に展開されうる可能性が示されたと考えられる。対面式の心理援助とどのように並行的に用いるかについてはエビデンスがなく,今後の研究が待たれる。
1) 梅垣佑介 (2016). インターネットは専門機関への援助要請行動を促進するか―ランダム化比較試験を用いた介入研究のレビュー―. 奈良女子大学心理臨床研究, 3, 33-40.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に上述の研究成果を挙げることができ,平成27年度の交付申請書に挙げた研究実施計画のうち(3)インターネット上で提供できる心理援助のコンテンツの開発も順調に進んではいるが,(1)事例研究については投稿準備中であった事例の当事者とコンタクトがとれなくなり,承諾が得られなかった。(2)文献調査については進行中で,別の事例研究も計画中である。こういった点から,進捗状況としてはおおむね順調~やや遅れ気味,であると判断した。特に,コンテンツをWeb上で公開するための専門性の高いプラットフォームの確保が遅れている。これは,インターネット上で心理援助を提供するための専門的なプラットフォームの価格上昇が進んだことや,平成27年度において円安であったこと,などによる。本件については平成27年11~12月に研究協力先である英国エクセター大学の教授を招いて相談をし,対策を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり,Web上にインターネット心理援助プログラムをアップロードするための専門的プラットフォームの確保の金銭面での困難さが現時点における最大の課題である。そのため,研究協力先であるエクセター大学の教授らと平成27年11~12月に話し合いを行った。エクセター大学は,独自に開発した心理援助のプログラムをインターネット上で安全かつ有効に提供するための経験とノウハウを有している。話し合いの結果,安価なプラットフォームでWeb上にアップロードすることもできなくはないが,個人情報の管理など責任を伴う問題が発生しうるため,本研究課題中はインターネット上でアップロード可能なコンテンツを小冊子やリーフレットなどの形で作成・配布し,それを利用した予防的研究を行う方向性もありうることを確認した。そのような方向性を含め,今後の研究計画について検討中である。エクセター大学のメンバーとは今後も本件について定期的にやり取りを続ける他,平成28年夏に研究代表者が同大を訪問予定であり,その際にさらに詳細の話し合いを行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度使用予定額のうち,インターネット・プラットフォーム購入費用に充てる予定であった分が,プラットフォーム費用が予想を上回る高額であったために購入できず,次年度に持ち越される形となった。それに加え,研究協力先である英国エクセター大学への渡航を予定していたが,平成27年度中に先方の大学よりスタッフが来日することとなったため,日本国内で打ち合わせを行ったために外国旅費が発生しなかった。以上の理由から,次年度への繰越額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度中に計画している英国研究協力先への渡航の費用として一部を使用することに加え,パソコンやタブレット,学術図書,統計ソフトなど研究基盤を整えるために使用する予定である。また,リーフレット配布による介入研究を行うことになった場合には,リーフレットの作成・印刷費用が発生する見込みであり,その費用を繰越分から支出予定である。
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Research Products
(1 results)