2015 Fiscal Year Research-status Report
老化・アルツハイマー病モデル動物における認知機能低下に対する幹細胞移植の効果
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15K17328
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
末永 叔子 東京福祉大学, 心理学部, 講師 (80431667)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の医療技術の発達により、平均寿命は伸びる傾向にある。この高齢化社会の中で高齢者の生活の質を維持する上で、身体的健康のみならず認知機能の低下をいかに防ぐかが喫緊の課題である。老年認知症のなかでもアルツハイマー病は多くの割合を占め、65歳以上の人口の約8分の1が罹患するが、現在までのところ、老化やアルツハイマー病の罹患に伴う認知機能の低下に対する有効な治療法は確立されていない。しかし近年、幹細胞を用いることでさまざまな脳の機能不全が改善される可能性があることが示唆されてきた。幹細胞とは自己複製能力と、他の細胞へと変化する能力を持つ細胞を指す。本研究ではアルツハイマー病モデル動物の認知機能低下に対する幹細胞移植の効果を検討することを目的とする。本研究によって、老化やアルツハイマー病に起因する認知機能低下に対する有効なアプローチを提案することができると考えられる。 今年度は神経毒の一種であるイボテン酸を用いた脳損傷手術の手続きの確立と当該動物の認知機能の基礎データを収集することを目的とした。本研究では老化やアルツハイマー病による認知機能の低下が大脳基底核の神経脱落と、そこから海馬へ投射する神経の機能不全によって生じると推測する。そこで、ラットの大脳基底核大細胞部または海馬にイボテン酸を微小投与し、認知機能課題の遂行に及ぼす影響を観察した。大脳基底核大細胞部損傷手術を施したラットは手術によるダメージが大きく、十分なデータが収集できなかったため、現在被験体の追加と手術法の見直しを行っている。海馬損傷群では空間的記憶課題の習得に障害がみられ、またすでに習得した空間記憶課題の遂行にも障害がみられた。非空間的な短期記憶および長期記憶は統制群との差がみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度はラットの大脳基底核大細胞部または海馬にイボテン酸を微小投与し、認知機能に及ぼす影響を調べることを目的とした。大脳基底核損傷実験には追加データが必要な状況であるが、概ね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
大脳基底核損傷動物のデータを追加し、老化・アルツハイマー病モデル動物の認知機能についての基礎データを得る。最終的な行動データや脳損傷の程度を鑑み、イボテン酸の濃度や投与量を調整するなど、脳損傷手術の手続きを見直す可能性があると考えられる。平成28年度以降は老化・アルツハイマー病モデル動物の脳に幹細胞を移植し、認知機能や脳神経にどのような影響を及ぼすかを観察する。
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Causes of Carryover |
当初認知機能を測定するための装置の購入を予定していたが、既存の装置において有効なデータが得られたため、装置の購入を見送った。また、平成28年度以降に必要となる実験手技の会得のためセビリア大学に赴くための海外出張旅費を申請していたが、先方の協力により、宿泊費を抑制することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初行う予定がなかった検査のための費用と、幹細胞の培養の為に必要となる装置の購入に充てる。
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