2017 Fiscal Year Research-status Report
自己行為の空間的拡張の利用:アバターを用いたやり忘れを防ぐ方法の検討
Project/Area Number |
15K17330
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
杉森 絵里子 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (70709584)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 記憶 / アウトプットモニタリング / 展望的記憶 / 行為記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
展望的記憶(将来行うべき行為に関する記憶)のアウトプットモニタリング(自身が行為を実行したか否かを判断する過程)対象になるのは,行為の意図であり,完了済みの意図に関し,非活性化 (deactivation) と持続的活性 (persisting activation) という2つの理論的立場が存在する。本研究では,完了した意図は抑制されるのか活性状態を維持するのかを検討するとともに,抑制の有無がその後の行為のアウトプットモニタリングにどのように関連するのかを検討することを目的とした。 学習セッションでは,コンピュータのディスプレイ上にランダムに配置された20単語を5分間呈示した。再生セッションでは,二重課題(カエルの歌を鼻歌で歌う)を遂行しながら学習した単語を再生させた。実験参加者が単語の再生を開始し10〜12語再生したタイミングで,課題を終了させた。その際の教示は2条件であり,中断条件群(また後ほど思い出してもらいます。)と,完了条件群(この課題は終了になります)であった。15分後,モニタリングセッションに移った。モニタリングセッションでは,実験参加者に,学習した単語を思い出せるだけ書き出させた。その後,その単語を再生セッション時に,「書いた」,「書けなかった」,「書いたかどうかわからない」の3つに分類させた。このモニタリングセッションは,1週間後にも実施した。 結果,重複エラー数に関し,完了条件において,当日にテストした方が1週間後にテストするよりもエラー数が増えた。中断条件では有意な差が示されなかったことを考えると,完了済みの意図は抑制される可能性が考えられる。つまり,本研究で得られた結果は,意図の非活性化理論を支持する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調である点としては,「自己主体感の観点から検討する自己アバタと実演効果」というタイトルで,日本認知心理学会第15回大会にて口頭発表を行った(高城・杉森, 2017)。今年度までの研究を基に,現在,VRやアプリを用いた,リマインダシステムの開発中であり,どういったリマインダーが,より効果的か,もしくは逆に,やったか否かのアウトプットモニタリング失敗に陥ってしまうのかについて,検討を行う準備を行っている。 予定通りにいかなかった点としては,現在まだ一昨年度の研究をまとめた論文(Self-referentiable Avatar and Enactment effect from the sense of agency)が投稿できていない状況であり,この件については8月までにCognition誌に投稿予定である。さらに,今年度中に,昨年度の研究成果を投稿する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果においては,日本心理学会にてポスター発表し,同時に国際誌Memory & Cognitionに投稿する。 今年度の研究としては,現在まで行ってきた実験結果を基に,展望的記憶の遂行をうながす&正確なアウトプットモニタリングに導くための,リマインダアプリを開発し,その有用性について検証する。まずは5月から8月までの80名を対象とし,リマインダとして効果的な要因と逆にアウトプットモニタリングを不正確にさせてしまう要因について検討するための実験を行う。 9月中に,その研究結果をまとめた上で,実用的なアプリを作成し,10月から11月に行う実験において,そのアプリの実用性について検証する。 12月から3月の間に,これらの研究成果を論文にまとめて投稿する。
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Causes of Carryover |
論文執筆後の,英文校閲代として使用する予定であったが,論文を書き終えることができなかったため,次年度にまわすこととなった。今年度7月までに英文校閲をするために使用する予定である。
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