2015 Fiscal Year Research-status Report
ドイツにおける学校田園寮運動の変容に関する研究-学童疎開との関係に焦点を当てて-
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15K17343
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
江頭 智宏 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40403927)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 学童疎開 / ヴァンゼー別荘 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヴァイマル時代に新教育運動として展開された学校田園寮運動の変容、すなわち学校田園寮運動とナチスとの関係について、3つの観点から先行研究ならびに史料を収集し、その分析に当たった。 1点目は、主要テーマである学校田園寮運動と学童疎開との関わりである。ベルリン連邦文書館所蔵の学童疎開に関するファイルであるZsg140等に所収された史料の中から、学校田園寮運動と学童疎開との結節点となる、ヴァイマル期の学校田園寮全国連盟の指導者であるH.ザールハーゲがハンブルクにおいて指揮した学童疎開関係の史料を収集した。現在までその分析を継続しており、加えてハンブルクに特化して学童疎開の先行研究を読み進めている。 2点目は、ナチ時代の学校教員たちが執筆した、ナチ時代の教育にとっての学校田園寮運動の「教育上の効果」について著した教育論文である。ヴァイマル時代の教員が執筆した教育論文も含めて全10点をベルリン教育史図書館において収集し、ナチ時代のものとヴァイマル時代のものを比較しながら現在分析を進めている。 3点目は、ヴァンゼー会議が開催されたヴァンゼー別荘内に設けらたことで、ホロコーストの痕跡を消すように作用した、西ベルリン・ノイケルン区の学校田園寮についてである、本テーマに関して、ヴァンゼー会議記念館文書館、コブレンツ連邦文書館、ドイツにおけるユダヤ人の歴史の研究に関する中央文書館において資料収集に従事した。それらの史料の分析を通して、2016年3月に開催された西日本ドイツ現代史学会第26回大会において「西ベルリン・ノイケルン区の学校田園寮について-ヴァンゼー別荘に設けられた学校田園寮-」というテーマで学会報告を行い、「現在の子どもたちの楽しみや喜び」が優先された結果ヴァンゼー別荘に学校田園寮が設置され、学校田園寮を存続させるうえで「現在の子どもたちの楽しみや喜び」が利用されたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学校田園寮運動とナチスとの関係を問ううえで興味深い、ヴァンゼー別荘に戦後設けられた西ベルリン・ノイケルン区の学校田園寮に関する研究は、膨大な史料を収集することを通してかなり詳細に研究を進めることができたが、学校田園寮運動と学童疎開に関する研究は、史料の収集は多少はできたものの、成果としては十分に公にすることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
とりわけH.ザールハーゲが学童疎開の指揮をしたハンブルクに焦点を当てて研究を進めていく。ハンブルクの学童疎開に関する先行研究を押さえると共に、夏季においてハンブルク中央州立文書館において学童疎開に関する史料収集にあたる。また同じく夏季に再度ベルリン連邦文書館を訪れると共に、27年度においては閉鎖中であったためアポをとったものの訪問することができなかったブランデンブルク中央州立文書館においても多岐にわたるナチ時代における学校田園寮運動に関する史料を収集する。 平成27年度にまとめた西ベルリン・ノイケルン区のヴァンゼー会議に関する研究をさらに推し進めて平成28年度の教育史学会で報告をする。またハインリヒ・ザールハーゲとハンブルクでの学童疎開に関して研究科紀要や研究室紀要等において論文を掲載する。
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Causes of Carryover |
夏季のドイツ滞在における史料収集に関して当初は3週間を予定していたがどうしても2週間しか予定が取れなかったことや、洋書の発注が十分に進められなかったことが要因として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
史料収集のためのドイツ滞在の時間を十分に取ると共に、洋書の発注を効率よく行っていく予定である。
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