2016 Fiscal Year Research-status Report
戦前日本の工業科教員養成における実業学校教員検定の果たした役割に関する研究
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15K17355
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Research Institution | Urawa University |
Principal Investigator |
内田 徹 浦和大学, 人間学部, 講師 (00633801)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 実業学校教員検定 / 工業教員養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、学校から労働への移行が円滑に進まない若者支援が社会問題となり、キャリア教育・職業教育に対する関心が高まっている。しかし、これまで日本教員養成史研究は、これらの教員養成を自覚的に追究してこなかった。本研究は、キャリア教育・職業教育、特に高等学校専門学科において職業教育を担当する教員の養成のあり方を追究するための基礎的作業として、「戦前の制度が影を落としているのではないか」とされる工業科教員養成制度の特殊性の形成過程を、戦前日本の実業学校教員の養成と供給において「最も重要な課題の一つ」とされる実業学校教員検定の実態、および同検定の成立過程に着目しながら解明することを目的としている。 具体的には、実業学校教員検定が制度化された1922年から廃止される1947年までの実態を、(1)実業学校教員検定の制度的変遷や実施の態様、(2)実業学校教員検定無試験検定受験者・合格者の実態分析、(3)実業学校教員検定試験検定受験者・合格者の実態分析、(4)実業学校教員検定検定委員と試験問題の分析により明らかにする。そして、これら(1)から(4)までの分析により明らかになった実業学校教員検定の特徴と臨時教育会議の課題意識の関係性を分析し、同検定が制度化に至った経緯とその意義を再検討する。 資料としては、主に『官報』を用いて制度的変遷や実施の態様、合格者数を分析し、受験者の受験動機や試験問題は、『文検世界』等の受験雑誌を用いる。また、臨時教育会議の分析には、文部省『臨時教育会議』(全5集、1979年)を用いる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実業学校教員検定の制度的変遷や実施の態様、および受験者数や合格者数を量的に分析し、その特徴が実習の合格者数にみられることは明らかにすることができた。しかし、研究の進展により、新たに実業学校教員検定と師範学校中学校高等女学校教員検定による「農業」や「商業」が制度上併存していたことが明らかになってきた。これらの関係と区分、そして、戦後日本の教員養成や教員免許制度への展開過程について一定の見通しが立てられたものの、制度上併存するようになる前の実業学校教員養成の実態を改めて問い直さなければ、実業学校教員検定の教育史上の意義を十分に解明したとはいえないと思われる。そのため、実業学校教員検定が制度化される1922年以前に、「文部大臣ノ認可」により実業学校の有資格教員となった者の実態調査に取り掛かっている。このデータ入力と分析のため、当初、予定していた計画よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
以上のような進捗状況から1922年以前の実業学校の有資格教員の実態調査を優先的に進める必要がある。 他方、天野郁夫『高等教育の時代』(上下巻)等により、私立大学にとって専門部が経営上、重要な役割を果たしており、これらの私立大学専門部が実業学校教員検定無試験検定の許可学校となっていたことが明らかになりつつある。そして、私立大学商学部等は「商業」を中心に、師範学校中学校高等女学校教員検定の許可学校となっていた。このように無試験検定の許可が学校段階により異なっていたことが、実業学校教員検定と師範学校中学校高等女学校教員検定の制度的併存と密接に関わっており、それが戦後日本の教員養成や教員免許制度へと展開していったとみることも不可能ではない。 私立大学専門部が実業学校教員検定の無試験検定の許可を受けるための申請書類を分析し、私立大学専門部が師範学校中学校高等女学校教員検定ではなく、実業学校教員検定の許可を申請したのか分析する。 この他にこれまでと同様、『文検世界』等の受験雑誌を用いた受験者の合格体験記等の収集と分析を進める。
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