2018 Fiscal Year Research-status Report
3歳児の「生きられた時間」を探る保育実践研究-生活と発達の連続性を問い直す-
Project/Area Number |
15K17356
|
Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
横井 紘子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 准教授 (60557784)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 保育学 / 保育実践 / 現象学 / 主観性 / 生きられた時間 / 3歳児 / 認定こども園 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は現象学的方法を用い、3歳児の時間性について保育実践を通して明らかにすることを目的としている。研究の4年目である平成30年度は、昨年度行った①認定こども園における3歳児クラスにおける参与観察をもとに、②認定こども園の実践についての文献および現象学的時間論を整理することを通し、③「3歳児クラスの時間性についての一考察-認定こども園での生活に着目して-」として、日本保育学会において口頭発表を行った。③では、在園期間や在園時間が異なる多様な子どもが共に生活している認定こども園において、新入園児がくわわり、在園時間も様々である3歳児クラスの子どもたちの時間性について現象学的視点から以下の二つの観点を見出し考察した。 ・適切なテンポに対する感覚 ボルノーは、時間は体験に応じて別の「テンポ」を持つことを指摘し、仕事と余暇では時間を生きる仕方は異なっていると言う。3歳児として適切なテンポと、1日の生活の流れにおいてその都度求められるこども園の時間における適切なテンポを考える必要がある。「流れ」や「雰囲気」という言葉で表現される保育環境における時間性を意識することで、子どもたちに対する質の高い保育の保障へとつながることが示唆された。 ・時計時間を超えた「いま」の拡がり 子ども園では、特に3歳児が2歳児に自分が過ごした保育室に行くと安心したり嬉しそうにする姿がしばしばある。これは2歳児の保育室から過去の自己が「いま」の自己とともに知覚され、過去を伴った厚みのある「いま」を生きることによって自己が安定していったと解釈できる。物理的に「いま」はいない自己や仲間との時間的・存在的つながりを子どもたちは感じ、そこで不安になったり安定したりすることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年11月~平成29年8月末まで、産前産後休暇及び育児休業を取得しており、29年度は十分に研究することが困難であり、研究の進捗は29年度の時点でやや遅れていた。平成30年度においても、本務先の業務と子育てとの両立が難しく、研究に取り組む時間が十分に確保できない状況にあり、研究は引き続きやや遅れている状況にある。特に今年度は、論文の形式までまとめることができず、研究成果の発信については、日本保育学会での口頭発表1件にとどまっている。 こども園の観察も十分な時間を確保することが困難であった。 また、研究で得られた成果を実践へ還元していく機会として、観察協力園の保育者を中心とした研究会を開く予定であったが、本研究を成果を総合的にまとめるにまではいかなかった。 以上のことからやや遅れていると判断する。よって、平成31年度(令和元年度)においても研究を継続し、成果をまとめ、発信していく作業を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
幼稚園での観察事例を整理し、「3歳児と5歳児の時間性の違いについて-実践事例の検討から-」として、3歳児と5歳児のごっこ遊びにおける役割分担のあり方の内実を探るため、時間感覚の違いに着目し、現象学的視点からまとめた研究を平成31年度(令和元年度)に日本保育学会において発表する。 また、保育実践研究の可能性を考えるシンポジウムにおいてシンポジストとして登壇予定である。そこでは、保育者に主観的に捉えられたことを研究としてどのように位置づけていくことができる、現象学的に子どもの生きられた経験を問う本研究の研究に対する基本的姿勢についても言及する。 また、本年度は研究の最終年次であるため、これまでの研究成果をまとめ、観察協力園の保育者を中心に、実践者を対象とした研究会を2月に開催する。
|
Causes of Carryover |
理由:研究の進捗の遅れと家庭状況の変化にともない、遠方の学会発表の見合わせと研究成果のまとめの報告会の実施等を見合わせたため、次年度使用額が生じた。 使用計画:学会への参加、論文の投稿、研究会の開催、報告書の作成を行うことで、最終年度においてすべて使用する計画である。
|