2015 Fiscal Year Research-status Report
戦後初期における子どもの観察と記録を基盤とした教師の力量形成とカリキュラム開発
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15K17368
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Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
大島 崇 相愛大学, 人間発達学部, 講師 (70715276)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 戦後初期 / 教師の専門性 / 問題解決学習 / 観察 / 記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、和歌山市立吹上小学校、加古川立加古川小学校など戦後初期のカリキュラム改革や社会科教育実践が盛んに行われていた学校における校内研究会に関する史料などを収集・整理した。 今年度の主な研究成果は以下の通りである。 (1)1947年版学習指導要領の時期における活動主義的な学習においては、子どもの興味や意欲にしたがって事実的知識を習得しており、子どもの認識は相互関連性のない知識の寄せ集めにならざるを得なかった実践事例を確認できた。 (2)1951年版学習指導要領の時期においては、子どもの価値観をゆさぶり切実な問題意識を呼び起こすことで学習にまとまりを持たせようとする実践事例が確認できた。このような実践においては、学習の対象と子どもとの関係の把握することが教師の専門性として求められていた。この場合の関係の把握とは、学習の対象についての客観的知識がどれだけあるかということではなく、子どもにとって学習の対象がどのような存在なのかという価値観に迫ることを意味する。学習の対象に対する子どもの価値観と教師の意図は必ずしも一致しない。その矛盾点を学習の出発点として捉えることが教師の専門性として求められており、教師による子どもの観察や記録がその専門性を支える営みとして機能していたことが示唆された。 (3)現代的な授業研究・教師による子ども理解の諸問題を把握すべく、現在の校内授業研究における教師の経験を対象に、経年変化を追いながら分析を行った。さらに、子どもの学びの価値を捉える教師の専門性についても考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで見落とされがちだった日本の戦後初期における授業研究や教師の専門性に関する史料を収集・整理できた。また、1951年版学習指導要領導入期をカリキュラム開発運動の収束や学習方法論の転換という観点から分析する一般的評価に対し、学習の対象と子どもとの関係を把握する教師の専門性の自覚化のプロセスとして再評価するための基礎作業を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
戦後初期における授業研究に関わる史料に加え、学年会などの日常的な子どもの観察・記録に関わる史料を収集する。開発・普及型の学校と批評・省察型の学校を比較し、子どもの観察・記録のあり方や校内研究における位置づけの違いなどを検討していく。研究成果についてを関連学会で発表し、論文を執筆していく。
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Causes of Carryover |
当初の計画より調査旅費の計上が少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
史料収集・調査ならびに学会参加に使用する。
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