2017 Fiscal Year Research-status Report
高度成長期日本の高校受験をめぐる言説にみる試験への期待と不信に関する研究
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15K17376
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
石岡 学 同志社大学, 文化情報学部, 助教 (00624529)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育社会学 / 歴史社会学 / 高校入試 / 高度成長期 / 言説研究 / 能力観 / 青少年問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度においては、提出した申請書の研究計画に基づき、作業を進めた。具体的な内容は以下の通りである。 まず、高校全入問題に関する資料について、前年度に調査・収集した総合誌・週刊誌の記事の分析を行った。具体的に分析対象とした雑誌は、『中央公論』『世界』『文藝春秋』『週刊朝日』『サンデー毎日』などである。次に、上記の作業と並行して、全国紙(朝日新聞・読売新聞・毎日新聞)における高校入試関連記事についての調査・収集を行った。これらの資料は、当時の高校入試(特に「高校全入運動」関連)をめぐって民衆レベルでどのような社会的認識がせめぎあっていたのかを明らかにするうえで、必要不可欠の作業である。 本年度の主な研究成果として、第一に、「『高校全入運動』言説における能力観の相剋」と題した発表を、第69回日本教育社会学会大会(2017年10月21日、一橋大学)にて行った。同発表では、「高校全入運動」の主張における「能力主義的選抜の否定」をめぐってどのような複数の能力観が衝突していたのかという問題について、特に受験生の親の意識に着目し解明したものである。第二に、前年度に第89回日本社会学会大会にて行った学会発表「高度成長期のテレビドキュメンタリーが描いた『世代間断絶』」をベースとした論文「高度成長期のテレビドキュメンタリーにおける『青少年問題』の表象」を、日本教育社会学会の学会誌『教育社会学研究』第101集に投稿した。同論文は、高度成長期にNHKで制作・放映されたテレビドキュメンタリーを分析対象として、そこにおいて「青少年問題」がいかなる問題として表象されたのかを解明したものである。同論文は査読を通過し、同誌にすでに掲載済みである(同誌pp.69-87)。 なお研究の進捗状況をふまえ、本年度は一昨年度と同様に「高校全入運動」への照準化を再度図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書において立案した研究計画では、平成29年度の前半に前年度後半に調査・収集した資料(主として対象時期における週刊誌の関連記事)の分析を行い、同年度後半にはこれと並行して全国紙(朝日新聞・読売新聞・毎日新聞)における高校入試関連記事についての調査・収集を行うことを予定していた。 実際には、上記「研究実績の概要」の通り、これらの作業を計画通りに進めることができた一方で、今年度は本研究課題に基づく学会発表および査読付き論文の発表という成果を挙げることができた。 以上の点より、本年度までの研究の進捗状況については、「おおむね順調に進展している」との評価が妥当と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「研究実績の概要」でも述べたように、これまでの研究の進捗状況をふまえ、本研究課題では再度「高校全入運動」への照準化を行った。今後においても、この方針に沿って研究を進めていく予定である。 具体的な作業については、申請書の研究計画に従い、平成30年度の前半は前年度後半に調査・収集した資料(対象時期における全国紙の関連記事)の分析を進める。分析の方針・方法については、平成28・29年度におけるそれを踏襲する。さらに、平成30年度の後半では、これまでに行ってきた一連の作業を総括し、研究課題の包括的考察を行っていく。すなわち、「高校全入運動」を軸として、高度成長期の高校入試をめぐる諸言説がいかなる言説空間を形成していたのかを明らかにする。研究の結論として、「試験言説」に投影された能力観・教育観とはいかなるものであったのかを、総体的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
申請書に記載した当初の予定では、旅費等の明細において平成29年度は調査研究旅費(東京4日間×4回)としていたが、実際は本年度において調査を目的とした出張は3回であった。これは、申請書の予定では平成30年度の調査研究旅費(東京4日間×1回)としていたが、研究の進捗状況を総合的に判断し2回分の旅費が必要となるものと判断し、翌年度分として請求することとしたものである。
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