2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on Expectations and Distrust for Exams in the Discourses about High School Entrance in Japan's High-Growth Era
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15K17376
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
石岡 学 同志社大学, 文化情報学部, 助教 (00624529)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育社会学 / 歴史社会学 / 高校入試 / 高度成長期 / 言説研究 / 能力観 / 青少年問題 / 高校全入運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度においては、提出した申請書の研究計画に基づき、作業を進めた。具体的な内容は以下の通りである。 まず年度の前半では、高校全入問題に関する資料について、前年度に調査・収集した全国紙(朝日新聞・読売新聞・毎日新聞)における高校入試関連記事の分析を行った。分析にあたっての方針・方法は前年度の分析と同様である。すなわち、試験の利点・欠点として語られていることは何か、それらの言説において前提とされていることはなにか(言説発信者の価値観、社会認識等)、どのような状況に対しどのような評価がなされているのか、といった諸点を明らかにし、それぞれの言説のロジック、構造、各主張間の関係性を解明した。 年度の後半では、2015年度より行ってきた一連の作業を総括し、本研究課題の包括的考察を行った。高校全入問題を中心として、高度成長期の高校入試をめぐる諸言説に投影された日本社会における能力観・教育観がいかなるものであったのかを明らかにした。 具体的に得られた知見の概略は以下の通りである。第一に、文部省をはじめとする全入否定派の能力観は、能力・適性に応じた進路分化を前提として「高校教育に堪える能力」は万人に備わっているものではないとするものであった。第二に、日教組を主体とする全入肯定派の能力観は、①真の学力とは受験学力ではない、②学力・学習意欲の低さは教育条件・環境の未整備に起因する、③15歳時点で能力を判定することはできない(すべきでない)というものだった。これは学力の概念に関わる点と進学時の選抜の是非という点において、相互に相容れない要素を含んでいた。第三に、保護者らの能力観は、万人が「高校教育に堪える能力」を備えていると見る点で全入肯定派と一致するものの、その進学要求が現実の状況(産業構造、職業威信、学歴の価値等)への適応という側面を有している点では全入否定派と通底するものであった。
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