2016 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ中等教育制度の二分岐型化に伴う学校配置計画の再編過程
Project/Area Number |
15K17380
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井本 佳宏 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (10451501)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生徒数減少 / 学校配置計画 / 教育機会 / ゲマインシャフツシューレ / 中等学校制度改革 / 二分岐型制度 / 二経路型制度 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツ中等教育制度の二分岐型化に伴う学校配置計画の再編過程の実態を明らかにすることを通じて、中等教育制度改革という州レベルの改革が、地域レベルにおいてどのように受容、実施されていったかに迫ろうとするものである。研究対象としてメクレンブルク‐フォアポンメルン州、テューリンゲン州およびザールラント州の3州を取りあげている。平成28年度については、前年度中に現地調査を行ったメクレンブルク‐フォアポンメルン州の調査結果の分析を進め、論文として発表する準備を行った。また、新たにテューリンゲン州およびザールラント州での現地調査を行い、調査結果の分析を進めた。 テューリンゲン州に関しては、人口の希薄化が進むキフホイザー郡を対象として選び、既存の非ギムナジウム校であるオルディスレーベン通常学校(レーゲルシューレ)がゲマインシャフツシューレへと転換していった経緯とその影響について、当校、郡教育事務所および州文部省において聞き取り調査を行った。 ザールラント州に関しては、非ギムナジウム校のゲマインシャフツシューレへの転換の経緯と実態について、州文部省、ザールブリュッケン市内ゲマインシャフツシューレ2校およびザールプファルツ郡内の1校において聞き取り調査を行った。 テューリンゲン州での調査からは、生徒数減少局面における個別学校の生き残り策としてゲマインシャフツシューレへの転換が選択されている様子が明らかとなった。また、ザールラント州での調査からは、総合制学校の人気の高まりと収容力不足への対応として、拡大実科学校のゲマインシャフツシューレへの転換がなされた実態が明らかとなった。 以上のように、予定していた3州すべての調査を平成28年度までに実施することができ、最終年度となる次年度にそれらの調査結果を総合的に分析し、研究成果をまとめるための基盤が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては、平成27年度に予定していたものの作業が遅れていた、メクレンブルク‐フォアポンメルン州について調査結果に基づく論文執筆を進めるとともに、テューリンゲン州およびザールラント州での現地調査の実施と調査結果の分析、学会発表、学会誌への投稿を行うことを計画していた。 メクレンブルク‐フォアポンメルン州に関する調査結果については、所属研究機関の研究年報(平成29年6月刊行予定)への投稿を行った。また、テューリンゲン州については平成28年5月、ザールラント州については平成28年11月にそれぞれ調査を実施し、両調査の結果に基づいて分析を進め、平成29年3月の東北教育学会大会において成果発表を行った。また、テューリンゲン州の調査結果については論文化し、学会誌への投稿も行った(現在査読中)。 以上のように、平成28年度においては前年度までの遅れを取り戻し、当初の計画にほぼ沿って研究を進捗させることができた。したがって、現在までの進捗状況としては「おおむね順調に進展している」と評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度はおおむね順調に研究を進めることができた。したがって、基本的には、今後の研究推進にあたっても、当初の計画を維持する方向で進める方針である。 具体的には、ザールラント州での調査結果を論文化すること、調査対象とした3州の調査結果の分析を総合し、最終的な研究成果をまとめることを予定している。なお追加的な現地調査の実施については、最終成果をまとめていく過程で必要に応じて検討する。最終成果については学会発表、学会誌への投稿も計画している。 なお、平成29年度は本研究計画の最終年度でもあることから、今後の研究の発展の方向性を見据えながら作業を進めることとなる。
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Causes of Carryover |
平成28年度には、ドイツでの現地調査を2回実施した。この間、円安傾向であったこと、また過疎地域での調査が中心であったためドイツ国内での交通費が事前の想定よりも多くかかったことなどから、2回目のザールラント州での調査を確実に実施するため、400,000円の前倒し支払い請求を行った。それにより予定していた2回の現地調査を滞りなく実施することができたが、前倒し支払い請求の際、不測の事態に備えて余裕を持たせた見積もりを行ったため、かえって次年度への繰り越しが生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した分についてはもともと、平成28年度に前倒し支払い請求したものの一部である。そのため、この繰り越し分を合わせても、平成29年度の使用額は当初の研究計画において予定していた使用額よりも若干少ないことになる。そのため、追加的な現地調査の実施の可否や実施する場合の期間や交通手段などの精査を行い、効率的に研究費を使用することで、研究の確実な実施を図っていく。
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