2016 Fiscal Year Research-status Report
韓国の才能教育における積極的格差是正措置に関する研究
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15K17390
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
石川 裕之 畿央大学, 教育学部, 准教授 (30512016)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 才能教育 / 英才教育 / 積極的格差是正 / 平等と卓越 / 韓国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年目となる平成28年度は、引き続き関連文献・資料の収集・分析に努めるとともに、前年度の調査結果の整理・公表に関する作業を進めた。さらに、才能教育の本場であり韓国の教育改革にも大きな影響を与えているアメリカの調査をおこない、公教育における平等と卓越のバランスという各国の才能教育に共通した命題について考察した。近年アメリカにおいても公教育における財政難は深刻な状況にあるが、その対応の1つとして各教育機関に大幅な自律権を付与し、互いに競争させるとともに、厳しい質保証システムを構築することを通じて、学校運営の効率化と経費節減を図ろうとしていた。これは、同じく公教育における財政難という状況下でもあくまで政府や地方の公権力が才能教育実施における主導権を握り続け、英才教育振興法という1つの法律に基づいて国内すべての才能教育機関を管理・統制し、予算が不足した分は受益者(保護者)の負担によって補おうとする韓国の対応と大きく異なるものであった。こうした対応の違いの背景にはもちろん米韓両国の教育システムや教育文化の違いが作用していると考えられる。韓国において才能教育機関に大幅な自律権を与えた場合、90年代の科学高校や外国語高校などの例をみても分かるように、才能教育の受験教育シフトが生じるのは想像に難くない。そもそも韓国の公教育システムは、受験競争の加熱を抑えつつ公平な教育機会を提供するために各教育機関の自律権を一定程度制限することで成り立っている部分がある。このため韓国においては、各教育機関に大幅な自律権を与えることは公教育システムの根幹を揺るがしかねず、政策的リスクが高いといえる。今年度の研究を通じて明らかになった財政難への対応に関するアメリカとの対比は、「国家的に統合され管理される才能教育システムの堅持」という韓国の姿勢を際立たせるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連文献・資料の収集・分析や調査結果の整理・公表を通じ、積極的格差是正措置を中心とした2000年代以降の韓国の才能教育の方向性や特徴に対する把握はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
より多くの教育行政機関や才能教育機関への訪問調査をおこない、先行調査で明らかになった情報との比較分析を進めることが今後の主要な課題となる。
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Causes of Carryover |
時間的制限により、現地訪問調査が少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の未使用額は、当初予定していた現地調査を次年度に実施することで使用する。
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Research Products
(3 results)