2015 Fiscal Year Research-status Report
小学生の資質・能力に与える学級活動の効果に関する実証的研究
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15K17404
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
長谷川 祐介 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (30469324)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 学級活動 / 特別活動 / 資質・能力 / 効果測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小学生の資質・能力に与える学級活動の効果に関する実証的分析を行い、分析結果をもとに資質・能力育成を目標とした教育課程編成における小学校学級活動の位置づけや、小学校学級活動の指導と量的評価の方法について考察を行うことを目的としている。平成27年度は次の3点を行った。 第1は、小学校学級活動において育成されることが期待される資質・能力の概念を整理検討である。これまで提案されてきた資質・能力モデルに関する知見を踏まえつつ、特別活動研究において議論されてきた資質・能力の整理検討を行った。 第2は、学級活動に関する実践事例の収集である。小学校学級活動のうち、学級活動(1)「学級や学校の生活づくり」に関する実践内容を把握するための実践事例収集を行った。実践事例は大きく2つあり、ひとつは学級活動に関する実践研究をすすめている公立小学校における事例である。学級活動の授業参観をするだけではなく、指導案作成から参加し、実践事例収集を行った。もう1つは特別活動に関する実践研究をすすめている公立小学校教員の実践事例収集である。これは学級活動(1)「学級や学校の生活づくり」に関する先進的な取組を把握するために行った。 これら2つの内容を踏まえて、第3に質問紙調査票の作成と実査を行った。学級活動の学校臨床学的研究に関する共同研究(JSPS科研費23653302)において実施した質問紙をもとに、資質能力に関する項目と家庭背景に関する項目などを加えて調査票を新規作成した。調査は2016年2月から3月にかけて、公立小学校5年の19学級を対象に実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実績は当初の研究計画に従っておおむね順調に実施することができた。具体的には「資質・能力に関する概念の整理検討」「項目作成」「質問紙調査の実査・分析」の実施を計画し、おおむね実施することができた。 まず資質・能力に関する概念の整理検討についてである。これは教育政策における議論内容や学術研究成果を踏まえ整理を行った。具体的には教育政策レベルにおいて「人間関係を形成する力」「社会に参画する力」「自己を生かす力」などを特別活動で育成すべき資質能力と想定されていることや、学術研究の成果を整理するなかで、近年注目されている非認知的能力を育成する機会として学級活動を位置づけることが可能であることを整理検討した。また学級活動の中心が話し合い活動であることから、国語科においても育成すべき資質・能力である「話すこと・聞くこと」を育てる機会として学級活動が機能している可能性があることを考察した。 これらの成果と学級活動の学校臨床学的研究に関する共同研究(JSPS科研費23653302)において実施した質問紙をもとに、「項目作成」「質問紙調査の実査・分析」をすすめた。研究計画にあったマルチレベル分析の実施を可能にするために同一学年(今回は5年生)で19学級を対象に調査を実施した。また調査票作成において、公立小学校の教員による協力を得た。具体的にはワーディングチェックなどを行ってもらった。 ただし調査対象の選定などに時間を要したため、当初計画より時期が遅れ年度末(2月から3月)の実査となった。そのため調査データの入力ならびに分析作業は平成28年度はじめに実施することとなった。 実査時期の変更に伴い、平成27年度に実施した研究成果の報告は平成28年度に実施することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年計画で実施をすすめている。研究2年目の平成28年度は次の2点の実施を計画している。 第1は、質問紙調査の調査分析と分析結果の報告である。平成27年度に実施した資質・能力に関する概念の整理検討と質問紙調査の分析結果の報告を行う。予定としては日本特別活動学会や日本教育社会学会で報告し、学会等に論文投稿を行う予定である。可能であれば、当初計画で平成29年度に予定した海外での研究成果報告を平成28年度に前倒しして実施したいと考えている。 第2は、新規質問紙調査の作成と実査である。平成27年度に実施した質問紙調査票を改良し調査票を作成する。これらに加え調査対象の協力を得られれば、教育実践改善への示唆を得るために、教師の指導・支援の項目を充実したうえで学級担任調査や、同一対象者に対し複数回実施するパネル調査を実施したいと考えている。 研究3年目の平成29年度は主に平成28年度実施予定の調査結果の報告ならびに本研究の総括を行う。具体的には、資質・能力育成を目標とした教育課程編成における小学校学級活動の位置づけや、資質・能力育成に寄与する小学校学級活動の指導と量的評価の方法について考察を行う。また本研究の課題を明らかにし、今後の研究指針を提示する。 その他、研究の深化を図るための情報収集のため、先行研究の整理検討ならびに本研究に関連する学会や研究会参加や実践事例の収集を随時行っていく。
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Causes of Carryover |
調査対象者の都合や調査票作成作業の進捗状況により、質問紙調査の実施が当初計画より遅れた。具体的には平成28年2月から3月と年度末となった。そのため当初予定していた研究計画1年目の質問紙調査のデータ入力作業を平成27年度中に行うことができなかった。また平成27年度の質問紙調査に係る郵送費や印刷費などの経費を予定より少額となった。 以上より平成27年度に計画していた謝金の支払やその他調査に係る予算を平成28年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に実施した質問紙調査票のデータ入力作業の費用として使用する。具体的にはデータ入力・整理作業の謝金として使用する。なお謝金は大学のアルバイト代の実勢を考慮して支払う。平成28年度は当初予定より研究成果報告を目的とした学会参加が増加する見込みなので、旅費として使用する予定である。
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