2016 Fiscal Year Research-status Report
価値多元的社会ドイツにおける道徳教育のカリキュラムと教授学に関する実証的研究
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15K17412
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
濱谷 佳奈 大阪樟蔭女子大学, 児童学部, 講師 (60613073)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドイツ / 宗教教育 / 道徳教育 / 倫理・哲学科 / 宗教科 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、コンピテンシー・モデルに基づく道徳教育カリキュラムの変革がどのように進展しているのかを明らかにするため、第一に、前年度に引き続きノルトライン・ヴェストファーレン州の学校での教育実践に注目し、調査研究を行った。とりわけ、宗教科カリキュラムにみられるコンピテンシー・モデルが、学習のなかでどのように活きているのかを検討するため、2017年2月に初等教育段階の授業の参与観察を行った。移民の背景を持つ児童や様々な宗教・宗派を信仰する児童、特別支援教育を必要とする児童、学習状況の異なる児童など、多様な背景を持つ児童が共に学ぶ基礎学校では、多様性を尊重した教育実践が試みられている。そうしたなかで、宗教科においても、学習の個別化と協同学習とを融合させるという、教授学習方法上の工夫により、個々の児童の学習が促進されていることが明らかになった。2000年のPISAショック以降にみられる学校教育の質保障という流れのなかで、道徳教育を担う教科においても、何を学校での道徳教育の中身として掲げ、どのようにその結果を保障していくのかという問いが重視されている。なお、倫理・哲学科カリキュラムの場合は、コンピテンシー・モデルの導入による州ごとの独自性から共通性への変容が認められたが、宗教科カリキュラムの場合の諸州間の事例比較は今後の課題である。 第二に、実践哲学科教科書の翻訳出版と日本版実践哲学科教科書を用いたワークショップの開催に向け、準備を行った。ドイツ側研究協力者および日本側研究協力者との協議を行い、ワークショップの内容の検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
授業実践の調査研究を行ったことにより、コンピテンシー・モデルに基づく道徳教育のカリキュラムと実際の教授学習方法がどのように機能しているかが明らかになりつつある。また、ドイツ側研究協力者および日本側研究協力者からの協力を得て、実践哲学科教科書を用いたワークショプ開催に向けた準備を開始することができた。 おもな成果としては、高校・大学生向けの宗教倫理資料集として、「世界の宗教と宗教間対話」を分担執筆し、ドイツでの道徳教育の教授学習方法を紹介することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までに行った文献研究と現地での調査の内容を整理した上で、最終年度である平成30年度に向けて、文献調査と現地調査を行う。 これまでの調査を通して明らかになった道徳教育のカリキュラムと教授学に関する研究成果を学会で発表し、今後の研究の具体的な方向性について、関連分野の研究者からの示唆を得る。 さらに、大学での道徳教育の研究の講義のなかで、実践哲学科の教授学習方法を実験的に試み、今後の道徳教育に関わる教師教育のあり方を検討する。
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Causes of Carryover |
実践哲学科教科書の翻訳出版に向けた校正作業および、版権交渉が求められている教科書の図絵の版権に関わる確認作業を継続しているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、研究図書・雑誌の購入と、学会発表のための旅費、ドイツでの調査旅費、および、実践哲学科教科書の翻訳出版に必要な版権使用料と製作費に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)