2015 Fiscal Year Research-status Report
多文化共生を目指した幼小連携多文化音楽学習アプローチの開発
Project/Area Number |
15K17413
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
峯 恭子 大阪大谷大学, 教育学部, 講師 (90611187)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 音楽教育 / 多文化音楽教育 / 幼小連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、幼児期からの文化的アイデンティティの育成を目的とした多文化音楽学習アプローチを開発することである。研究の全体構想における本年度の目的は、(1)先駆的に多文化音楽教育を行っている米国のナショナルスタンダードの分析・及び特徴の考察、(2)幼小連携による実践を行っている諸外国の様々な事例を分析・検討することである。 まず、研究対象としている米国では、21世紀型スキルに対応する新たな標準として、2014年に全米芸術教育標準から全米コア音楽標準へと改訂された。本研究では、前標準との比較を行いながら、全米コア音楽標準の構成の特徴を明らかにした。これまでと大きく異なる点は、前標準が技能や知識を中心に構成されていたのに対して、全米コア音楽標準では、継続的な理解力と自立した音楽活動を重視した幅広い音楽リテラシーの獲得を中心として構成されていることである。また、多文化的な視点が直接的に明記されることはなくなり、活動標準の個々の内容に文化や歴史に関する内容が適宜記載されることとなった。今回の改訂によってその構成は大幅に変化を遂げ、これまでの行動や活動を重視するスタンダードではなく、思考や認知のプロセスに着目し、音楽をその目的や文脈から捉えることを重視するようになったことが今回改訂された全米コア音楽標準の構成の特徴といえる。 次に、幼小連携の視点から音楽学習を行っている諸外国の実践分析として、2015年9月12日から18日にオーストラリアのブリスベンを訪れ、Bulimba State Schoolでの実践分析を行った。その結果、学習アプローチの特徴として、①無意識的な音楽の学びから意識的な音楽の学び、及び表現へと発展していること、②音楽表現を通して自己肯定感や他者受容感を育成しようとしていること、③音楽的な理解を伴った音楽経験を一貫して志向していること、が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、事前研究と調査研究の両側面から研究を行っている。事前研究として、多文化教育を先駆的に行っている米国のナショナルスタンダードに着目し、2014年に改訂された最新版の全米コア音楽標準の分析を進めている。また調査研究として、幼小連携による実践を行っているオーストラリアのBulimba State Schoolの実践を視察し、その実践分析を行った。上記の区分を選択した理由として、米国のナショナルスタンダードの改訂にともない、スタンダードの分析を優先的に行う必要があったことから、音楽教育教材の分析には未だ至っていないことが挙げられる。したがって、今後は更なるスタンダードの分析、及び特徴の考察とともに、指導計画の分析も行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、ナショナルスタンダードや指導計画等の理念的側面、及び現地調査等の実践的側面の両側面から研究を行う。まず、米国のスタンダードが改訂されたことに伴い、多文化的視点からさらにスタンダード及び授業計画の分析を行うことによって、先駆的に多文化音楽教育を行ってきた米国の音楽教育の動向を明らかにする。 また、多文化共生を目的として保育実践を行っているオーストラリアや、幼小連携の視点から保育を行っているフィンランドの幼稚園を訪問・見学し、現地調査を行う。これらの目的は、保育環境及び保育内容の調査、また多文化音楽教育の最新の動向の調査を行うことである。 以上を踏まえ、本研究の成果を日本音楽教育学会等にて発表し、 幼児期からの体系的な多文化音楽学習アプローチについて検討を重ねる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、研究対象国である米国のナショナルスタンダードの改訂に伴い、米国における現地調査及びワークショップへの参加ではなく、新スタンダードの分析・検討を優先的に行う必要があったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、新スタンダードの分析、及び授業計画等の音楽教育教材の分析を進めると同時に、次年度は、多文化的な視点から実践を行っている諸外国の現地調査を平行して行う。また、米国以外の諸外国の教科書、授業計画等の収集を行い、理念的側面からの分析も進めていく。
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