2015 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症児における協同活動の特徴とその発達支援
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15K17421
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
吉井 勘人 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (30736377)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ASD児 / 協同活動 / 参与観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
ASD児における他者と意図やプランを共有して行為する協同活動の特徴を明らかにすることを目的として、「研究Ⅱ ASD児における言語使用を含む協同活動の特徴:特別支援学校の授業場面の観察を通して」を中心に研究を行った。特別支援学校(知的障害)の中学部(2年)に在籍する、大人との間で簡単な言語的相互作用の成り立つASD児1名を対象として、「生活単元学習」における話し合い、制作などの授業場面における他児や教師との相互作用についての参与観察を行った。授業の様子は、VTR(1台)での撮影とフィールドノーツにより記録した。対象児、他児、教師のビデオ映像は発話、視線、表情、身振りの観点から文字化して、Tomasello et al(2005)の示す協同活動を構成する3つの要素の観点(目標の共有、相補的・相互的な役割の理解、相互支援)を基にして分析を行った。その結果、対象児は教師の発話への応答としての頷きや発話、他児の発話を繰り返し発話すること、他児からの提案に応じて動作することが示された。一方で、自発的にプランを提案すること、他児への積極的な援助行為はみられなかった。以上より、対象児は、特定の活動の目標を理解して教師や他児の求める役割に応じて相互的・相補的に行為することは遂行できたが、仲間と協同でプランを立てること、また、仲間との間での相互支援はみられなかった。本研究では、協同活動の構成要素を分析することで、日常生活文脈におけるASD児の協同活動の特徴を見いだせた点に意義があると考える。一方、このような特徴が、他の日常生活場面においてもみられるのかについて詳しく検討する必要があると考える。その他の取組として、ASD児の協同活動の評価の観点を洗練させるにあたって、学習会(毎月実施)に参加して、評価方法について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、研究Ⅱを実施し整理したが、研究Ⅰ ASD児の半構造化場面における協同活動の特徴に関する検討は、予備観察の段階であり、平成28年度に本観察を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、研究Ⅱの継続調査、研究Ⅰの本観察を実施する。研究Ⅰについては、対象を限定して調査を実施する予定である。これらの研究成果については、学会発表を予定している。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況の遅れから、研究Ⅰの本調査を次年度に行うことになり、調査費用を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
観察用の道具と器材の購入を6月に予定している。
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