2017 Fiscal Year Research-status Report
日本特別支援教育史研究―戦前の東京・大阪の特別教育システムの比較を中心に―
Project/Area Number |
15K17426
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
石川 衣紀 長崎大学, 教育学部, 准教授 (80584010)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 東京市 / 大阪市 / 教育改善事業 / 貧民教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
①学制前後から1900年第三次小学校令までにおける東京市・大阪市を検討対象とし、それぞれどのような「貧困・児童労働・不就学」等の実態とそれに対する多様な教育的配慮の実際が展開していたのかを比較検討した。東京と大阪の共通点として、まず寺子屋教授において多様な生活上・発達上の困難を有する子どもが、同じ場において教育を受けていた事実が指摘できる。一方、東京と大阪の相違点は、東京では私立小学校の設置と存続に積極的であり、特に明治20年代半ばまでは私立小学校数が公立小を上回ったのに対し、大阪ではそのような動きは見られず、常に公立小学校数のほうが多数のまま推移した。以上の内容を学会にて口頭発表を行った。 ②戦前の大阪府・市を中心とした貧民教育に関する先行研究のレビューを通して研究の動向と課題を検討した。大阪市では明治期より貧困や児童労働等を背景にもつ児童への教育救済が実施されてきたことが先行研究より明らかになった一方で、特に明治期における小学簡易科、夜間小学校・特殊小学校などの、「貧民学校」とされてきた教育形態について、当時の多様な教育的ニーズ(社会的階層上や発達上)を有する子どもへの積極的な教育保障の場として明確に位置づけた先行研究は、見ることができなかった。以上の内容を学会にて口頭発表を行った。 ③小学校教育の制度的確立を見た直後である1900(明治33)年第三次小学校令制定以後の東京市・大阪市における、子どもの「貧困・児童労働・不就学」の実態とそれに対する多様な教育的配慮の原初的試行について、「特殊小学校」「勤労学校」「二部制教授」等を中心に検討していく。明治後期から大正期にかけて、急激な都市化・産業化・工業化の過程で単一の学校に通えない子どもは引き続き多く生じており、同時に彼らへの特別な教育的配慮の原初的試行が様々な形態で実施されていた。以上の内容を学会にて口頭発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
公文書史料の収集と分析に時間を要しており、小学校への実踏史料収集調査への移行が遅れ、特別学級の実態把握が遅れていることによる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究動向にかかる文献レビューを行ないながら、史料収集(特に大阪市内の公立小学校を中心に)と学会発表・論文投稿へむけて作業量を充足させていく。
|
Causes of Carryover |
研究計画の遂行に遅れが生じ、特に旅費の執行が遅れているため。 2018年度においては、とくに大阪市を中心に資料収集を進め、旅費および印刷費として使用する予定である。
|
Research Products
(7 results)