2015 Fiscal Year Research-status Report
ICTを活用した知的障がい児健康づくり支援と教育‐健康づくり支援システム開発‐
Project/Area Number |
15K17430
|
Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
大橋 千里 富山高等専門学校, 一般教養科, 准教授 (60462131)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 健康づくり支援 / スマートフォンアプリ / 身体活動量 / 知的障がい児 / 福祉情報機器 / 臨床実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はこれまでに開発してきた身体活動量を測定するスマートフォン支援アプリ「Location Collector」とデータサーバのブラッシュアップに加え、スマートフォンアプリに新しい機能を追加することを重点的に行った。そして、スマートフォンからのデータの収集とwebブラウザー上でのデータ表示および評価に関する一連の動作確認した。 その後、国立病院機構東長野病院リハビリテーション科と長野県長野養護学校からの協力を得ながら、9歳のダウン症男児とその家族を対象に本システムを用いた臨床実験を夏季休暇中に実施した。本来の目的は、知的障がい児が通う特別支援学校教員と保護者との連携による健康づくり支援を想定して開発を進めているが、今回の臨床実験は対象者と研究実施者がシステムを介して繋がり、毎日の結果のフィードバックおよびコミュニケーションを遠隔地にて実施し、データ収集を行った。 加えて、長野市で行われたHappy Spot Club主催の体験型福祉イベント「ハピスポひろば2015」や、全国KOSEN福祉情報教育ネットワーク主催で熊本県立黒石原支援学校にて開催された「e-ATセミナー」では、本システムのデモ展示を実施し、多方面の方々からの意見を頂戴した。その際に、本システムに関するパンフレットを作製し配布した。 システム開発と臨床実験による成果については、タイのキングモンクット工科大学で行われた国際会議(International Conference on Engineering and Technology 2015)にて発表した。その他にも、国内学会にて2件発表を行った。さらに現在英文による論文を執筆中であり、平成28年度には投稿予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、複数の高専の教職員で組織された「全国KOSEN福祉情報教育ネットワーク」と連携しながら実施している。平成27年度の研究実施計画では、富山高専射水キャンパスに開発用のサーバを立ち上げることとしていたが、当該年度はシステムのブラッシュアップを最優先するために、これまで使用してきた熊本高専に設置されている「全国KOSEN福祉情報教育ネットワーク」の共有サーバを継続的に利用することにした。また、当該年度は、利用者である知的障がい児とその保護者が自らのデータを自己評価できるタブレット端末アプリ(電子版がんばり表)の開発を予定していたが、本システムの身体活動量のデータ収集(スマートフォンアプリ)とその評価(データサーバ,webブラウザー上での操作)までの機能のブラッシュアップを優先的に行った。スマートフォンアプリではGPSによる歩行距離の測定に加え、新たに加速度計を利用した歩数計の機能を加えた。データ送信時にネットワークが繋がっていない場合は、30秒間隔で再送信処理を行うようにしたことにより、ネットワーク環境に左右されることなくアプリを利用することが可能になった。それに伴い、webブラウザー上の表示方法も変更し、時系列に歩行距離と歩数が表示され、2つの指標で身体活動量の評価をすることができるようにした。さらにスマートフォンのバッテリー充電の残量もwebブラウザー上で確認することができるようにした。双方の機能の動作確認を行った後に、臨床実験を実施した。 臨床実験は、東長野病院と長野県長野養護学校の協力のもと、9歳のダウン症男児とその家族を対象に夏季休暇中に実施した。男児にはスマートフォンが入ったウエストポーチを装着して日常生活を送ってもらい、得られたデータの評価と対象児へのフィードバックは研究実施者が行い、一連の遠隔地身体活動支援活動が可能であることを確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、タブレット端末アプリ「健康づくり学習アプリ」の開発に新たに取り組む。このタブレット端末アプリが本システムに加わることにより、知的障がい児の健康づくり支援と教育が連動して実施することが可能になる「健康づくり支援システム」。このアプリ開発には、富山高等専門学校電子情報工学科の秋口俊輔の協力を得ながら実施していく。これと並行して、前年度に臨床実験に協力していただいた男児および家族に、当該年度は長期的なスマートフォンアプリの利用を依頼し、システムの長期利用が日常の身体活動や健康因子に与える影響を明らかにしていく。 そして、平成29年度は全国KOSEN福祉情報教育ネットワークを通じて、各高専が連携している全国の特別支援学校や国立支援教育総合研究所へ協力を依頼し、学校と家庭との連携による健康づくり支援システムの実装実験を行い、得られたデータからさらにシステムをブラッシュアップし、実装システムとしての精度をより高めていく。 本研究で完成したシステムは、国立特別支援教育総合研究所のポータルサイトを利用して、全国展開していくことを目指す。利用者数を増やしシステムの実稼働を行うとともに、それに伴って得られるデータから、開発したシステムの有効性を利用者数、利用頻度と期間といった指標から、知的障がい児やその教員、家族に対するシステムの利便性を評価していく。また、このシステムの利用による知的障がい児の日常の身体活動量および身体活動強度の変化といった教育的効果の評価も実施する。 これらの研究成果を、アシスティブテクノロジーに関する国内外の学会等で積極的に発表することで、将来的には英語版の開発および実装の可能性を広げていく。
|