2015 Fiscal Year Research-status Report
ファンデールワールス強磁性体を利用したグラフェンへのスピン注入
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15K17433
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒井 美穂 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (20738588)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 二次元原子層物質 / グラフェン / 強磁性体 / スピン注入 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェン上に原子層転写技術を用いてFe0.2TaS2薄片を接合、電子線リソグラフィーと電子線蒸着によってAu/Ti電極を付与した。このデバイスはFe0.2TaS2を強磁性電極、Au/Tiを非磁性体電極とした3端子抵抗が測定可能となっている。低温においてグラフェンの面内に平行磁場を印加し3端子抵抗の磁場依存性を測定したところ、磁場が上昇するにつれて3端子抵抗が減少、飽和する現象を観測した。Fe0.2TaS2は面直に磁気異方性を持つため、Fe0.2TaS2より注入された電子スピンが面内磁場を印加されることにより歳差運動を起こし緩和するHanle効果と呼ばれる現象を観測したと考えられる。実験により得られた3端子抵抗カーブにHanle効果における理論計算値をフィッティングしたところ、グラフェンにおける電子スピンの緩和時間は10ps程度となった。この値は過去に別の手法により実験的に求められたグラフェンにおける電子スピン緩和時間と概ね合っており、原子層物質のみで構築されたデバイスにおける電子スピン注入が成功したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェン/FexTaS2接合を作製できた点、また電気伝導測定によって強磁性原子層物質からグラフェンに電子スピン注入が可能であることを示せた点は、目標であるファンデールワールススピンバルブ素子作成への大きな一歩であると言える。一方、インタカレートされたカルコゲナイド層状物質は機械的薄膜化が難しく、他の層状物質との接合界面が安定ではないという問題点も見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
問題点として、遷移金属がインターカレートされたカルコゲナイド層状物質は、機械的薄膜化が難しいとう点が挙げられる。薄膜化後の表面に凹凸が見られ他の原子層物質と接合を作製する際、接合抵抗の増大し界面を電流が流れない、挙動が不安定となるといった問題が生じる。 筆者はインターカレートされた元素量を減らすことで、機械的薄膜化が比較的容易であることを見出している。今後、インターカレート元素量を適度に調節した結晶を用いて、ファンデールワールス接合を作製、電気伝導評価に加え、断面TEMを使い界面付近の評価も行う予定である。
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