2016 Fiscal Year Research-status Report
ポリフェノール模倣高分子の精密重合と天然を超える機能創出
Project/Area Number |
15K17440
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江島 広貴 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00724543)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ポリフェノール / RAFT重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリフェノールは植物の葉、茎、樹皮、果皮、種子などに多く含まれているバイオマス由来の化合物であり、抗酸化作用、抗炎症性、抗菌作用といった優れた生理活性を持つ。植物性ポリフェノールの化学構造から着想を得た新たなポリマー、ポリビニルガロール(PVGal)の合成法を昨年度に確立した。今年度はまずガロール基の含有率を制御するために、ブチルアクリレート(BA)との共重合体、P(VGal-co-BA)の合成を試みた。しかしながらガロール基の保護基であるメトキシ基を脱保護する最終ステップにおいてBAのエステル基が三臭化ホウ素の高いルイス酸性により分解されてしまった。そこでより温和な条件で脱保護可能なフェノール基の保護基をいくつか検討した。その中でメトキシメチル基を保護基として用いたところ、脱保護反応がBAに影響を与えず問題なく進行することを見出した。メトキシメチル基を保護基とする合成経路で、ポリビニルフェノール、ポリビニルカテコールのBAとの共重合体やスターポリマーも合成することができた。次にこれらの抗酸化活性を1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル消去活性、2,2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸アンモニウム(ABTS)ラジカル消去活性、酸素ラジカル吸収能(Oxygen Radical Absorbance Capacity, ORAC)法によって調べた。ガロール基を持つポリマーは特に高い抗酸化活性を示し、一部の天然のポリフェノールよりも強い抗酸化活性を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多少の合成経路の変更はあったものの、当初の計画通りにカテコールポリマーとガロールポリマーの共重合体を含む様々なポリフェノール模倣高分子を精密重合することに成功し、高い抗酸化活性を発現したから。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年で確立した重合法を用いると抗酸化活性をもつPVGalと他の共重合体を自在に合成することができるようになった。今後は本共重合体を、抗酸化活性を持つナノキャリアへと自己集合させることを目指す。
|