2016 Fiscal Year Research-status Report
ナノ表面での光吸収を利用した発熱と熱輻射の高効率化
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15K17447
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
石井 智 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 研究員 (80704725)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遷移金属窒化物 / 表面プラズモン / 光熱変換 / 熱輻射 / メタマテリアル / タムプラズモン |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ粒子を使った光熱変換の研究では、前年度まで研究してきた金属的な遷移金属窒化物だけでなく、半導体であるゲルマニウムナノ粒子も高い光熱変換特性を持ち、太陽光の光熱変換に有用であることを明らかにした。ゲルマニウムナノ粒子の場合、プラズモン共鳴ではなくミー共鳴によって光吸収量が増大する。これらの成果はAdvanced Optical Materialsから発表した。 遷移金属窒化物の一つである窒化チタンナノ粒子を使った研究は、前年度の基礎的な研究を発展させることができた。一つは、形状記憶ポリマーに窒化チタンナノ粒子ナノ粒子を添加することで光照射によって発生する熱に応答する形状記憶ポリマーの開発に成功した。本成果はACS Applied Materials & Interfacesに掲載された。また窒化チタンナノ粒子で発生する太陽熱を用いることで、一酸化炭素を酸化させて二酸化酸素を生成することに成功し、論文(RSC Advanced)にまとめた。 表面の微細構造によって熱輻射を制御する研究では、モリブデンを用いることで真空中で1000度以上まで加熱できる狭帯域な熱輻射を実証しAdvanced Optical Materialsから発表した。また2次元微細構造を持たない構造による熱輻射の狭帯域化も検討し、タムプラズモンを励起することでそれが達成できることを実験と計算で示した。タムプラズモンは1次元フォトニック結晶上の金属薄膜中に励起されるモードで波数がゼロでも励起できるのが特徴である。タムプラズモンによる熱輻射の制御は本研究が初めてで、Optics Lettersに発表した論文はEditor's Pickに選ばれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ナノ粒子を用いた光熱変換に関しては、当初検討していなかったミー共鳴の有用性に注目することで、金属ではない高屈折率での材料でも光熱変換を行えることを示し、ゲルマニウムナノ粒子でその実証を行った。ミー共鳴を示す半導体材料は他にもあり。シリコンナノ粒子でもゲルマニウムと同様の光熱変換を確認している。 予定していなかった成功した事例は熱輻射の狭帯域化の研究でもあった。波長選択型の吸収体は2次元微細構造で実現できることが知られているため、熱力学のキルヒホッフの定理より熱輻射の波長選択も得られることは想定していた。その考えに基づく構造はモリブデンの微細構造で実現したが、台湾の陳助教授との共同研究で、1次元の多層膜構造に波数ゼロでタムプラズモンが励起できるという着想を得た。それを利用した波長選択吸収及び波長選択熱輻射ができるという構想にいたり、実験で波長選択吸収及び波長選択熱輻射を実現することができた。 このように当初予定していなかった成果を大きく2つ上げることができたため、自己評価は、当初の計画以上に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度末に始めたSTEM-EELSによる窒化チタンナノ粒子の観察から、STEM-EELSは窒化チタンナノ粒子のプラズモン共鳴を実空間で観測するのに有効である感触を得た。微視構造や表面酸化膜の有無は窒化チタンナノ粒子のプラズモン共鳴ひいては光熱変換効率に大きな影響を与えるため、電磁場計算なども含め今後より詳細な解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
28年度末に始めたSTEM-EELSによる窒化チタンナノ粒子の観察から、STEM-EELSは窒化チタンナノ粒子のプラズモン共鳴を実空間で観測するのに有効である感触を得た。微視構造や表面酸化膜の有無は窒化チタンナノ粒子のプラズモン共鳴ひいては光熱変換効率に大きな影響を与えるため、電磁場計算なども含め今後より詳細な解析を進めていく。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
STEM-EELSは京都大学の有料の装置を使うため、その装置使用料と交通費及び試料準備にかかる費用を予算使用用途として見込んでいる。
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Research Products
(9 results)